歯周病菌に常に暴露されるという特異な口腔内環境であるため、何かしらの対処をしない限り歯周病に罹患する可能性が高い。インプラント埋入後、インプラント周囲組織に炎症が波及すると、周囲組織の破壊は急激に著しい機転を来たし、時としてインプラントを予後不良に至らしめる。このような問題を解決する手段として、付着上皮の生物学的封鎖が挙げら れる。 工業塗装分野で用いられる電気化学的表面処理の電着は、汎用でありながら導電性のある金属材料全般に対し均一な薄膜塗装処理が可能あり、生体機能性を付与することができる。一方、歯科用インプラント側の歯肉の内側付着上皮には接着に必要不可欠なラミニンが存在しない部分がある。あっても限局的である。また、ターンオーバーも遅いため、感染防御や機械的刺激に対する抵抗性も弱く、強い上皮性封鎖が望めない。 そこで、強固な生物学的封鎖が実現できるよう、ラミニンをチタンへ電着固定化し、また、回転電極による流速環境で電着を行うことでラミニンに配向性が付与され、生体模倣の状態となる。この生体模倣の状態で金属を生体機能化させることを目的とした。 ラミニンの電着固定化には、pH4の電解液、カソード電位を印可する直流電流が有効であった。電着時間には有意な差は認められなかった。回転電極によるラミニンの配向性は認められなかったが、固定化量の増加が観察された。しかしながら、電着固定化、配向性を制御するためにはより細かく厳密な条件決めが必要であると考えられた。
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