研究課題/領域番号 |
20K10010
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
岩竹 真弓 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (40624614)
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研究分担者 |
住田 吉慶 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 准教授 (50456654)
長村 登紀子 (井上登紀子) 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (70240736)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 臍帯由来間葉系幹細胞 / 骨再生 / アクチン重合 |
研究実績の概要 |
頭蓋骨・垂直的骨増生モデルに高効率な骨芽細胞分化誘導を示す臍帯MSCをβ-TCP顆粒に播種して移植を行ったところ、移植後8週までに経時的に有意な新生骨形成量の亢進が見られた。さらに、骨芽細胞分化の指標であるALP活性がプラトーに達する直前の培養7日目のUC-OBと、さらに骨芽細胞分化が成熟する培養10日目のUC-OBで骨形成能を比較したところ、培養7日目のUC-OBを移植した試料で骨形成量が亢進していた。前骨芽細胞から骨芽細胞への分化初期のUC-OBが生体での骨誘導には有利であることが示唆された。この結果については、5名の臍帯MSCで再現性を確認しており、安定的に骨形成能を発揮するUC-OBを得ることができている。 一方で、UC-OBは臍帯MSCのゲル上培養で得られるが、その高い分化誘導の機序については、プラスチック培養皿でアクチン重合阻害剤を併用して分化誘導した臍帯MSCを移植したところ、ゲル上培養と同等のレベルには達しないものの、阻害剤無添加で分化誘導した細胞と比較して有意に骨形成量は亢進した。そのため、生体で高い骨形成能を発揮する臍帯MSCは臍帯MSCのアクチン動態への介入により得られることが示された。 UC-OBによる骨形成誘導の機序について、移植された臍帯MSCは、RANKLやBMP、OC、VEGFなどを高発現していることから、移植後の一定期間移植局所に留まり、レシピエントの破骨細胞や間葉系幹細胞、骨芽細胞の活性化に機能する液性因子などを分泌することが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は薄膜コーティングしたTypeⅠコラーゲンやfibronectin上での骨芽細胞分化誘導について解析を進めた。ゲル上培養では形態変化や遊走性の向上により骨芽細胞への分化が亢進することが示唆されたが、その他の基質上での培養では顕著な亢進が見られなかった。 またコラーゲンゲル上で培養すると細胞増殖が抑制されるため、細胞数の確保が重要な課題となる。その解決策として細胞を高密度に播種した培養条件について検討したところ、これまで以上に高い骨芽細胞誘導分化効率を示す細胞が得られ、充分な細胞数を確保できることが分かった。それにより広範囲の顎骨欠損部位への応用も有用であると考えられる。 よって本年度において、予定通りに進捗している状況である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに頭蓋骨骨膜下に細胞を移植し、骨増生モデルにて新生骨形成の効果を確認してきたが、本開発の細胞が機能評価として疾患モデル動物への細胞移植による骨形成能の効果を確認する必要がある。 当初の研究計画に沿って、令和3年度は① 歯槽骨欠損症(頭蓋骨欠損モデル)、②骨粗鬆症モデルへの細胞移植による治療効果について検討する。骨形成の解析にはμCTまたは小動物PET/SPECT/CTを用いる。また病理組織学的検索においてH-E染色、免疫組織学的検索としてTRAP 染色およびアルカリフォスファターゼ染色を行い、組織計測を行う。走査電子顕微鏡にて表面構造の観察を行うこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた解析実験を次年度に実施することになったため、繰越額は解析実験に必要な物品の購入に充てる予定である。
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