研究実績の概要 |
塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)は2016年より歯周組織再生剤として本邦で認可され、歯周外科治療において臨床応用が可能となり良好な臨床結果が広く報告されるようになった。しかし、残存骨壁数の少ない骨縁下欠損においては、その効果は限定的で骨移植材との併用が望ましいと考えられる。しかし併用する骨移植材の特性は様々でどの骨移植材との併用が効果的であるかについてのエビデンスはまだ存在しない。そこでbFGFと臨床応用報告の多い各種移植材の併用効果についてイヌの1壁性骨欠損を用い評価を行った。まず、βリン酸三カルシウム(βTCP)、炭酸アパタイト(CO3Ap)および脱タンパク牛骨ミネラル(DBBM)を用い、bFGFの各骨移植材への吸着能をELISAにて定量した。 続いてビーグル雄成犬(5匹)の臼歯部の歯肉弁の剥離・翻転後、第2・第4前臼歯の近遠心部に1壁性骨縁下欠損を外科的に作製し、これら欠損に各々の骨移植材併用移植(bFGF/βTCP群, bFGF/CO3Ap群, bFGF/DBBM群)とbFGF単体(bFGF群)を無作為に施した。術後10週で動物の安楽死を行い脱灰標本を作製し組織学的評価を行った。 ELISAの結果、bFGFの吸着量はCO3Apが最大でβTCPより有意に高かった。骨移植材周囲の骨添加は様々なレベルで認められたが、骨移植材の残留はbFGF/βTCP群で最も少なく、bFGF/DBBM群で最大であった。組織形態計測の結果、bFGF群より骨移植材併用群で歯周組織再生量は多く、bFGF/DBBM群が最大で新付着量は他群より有意に多かった。これは各移植材の吸収性、骨伝導能さらにbFGFの吸着/徐放能の違いに起因すると考えられた。以上のことからbFGFとDBBMの併用処置はbFGF単独およびβTCP ,CO3Apとの併用処置より効果的に歯周組織再生を促進することが示唆された。
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