研究課題/領域番号 |
20K10013
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
會田 英紀 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (10301011)
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研究分担者 |
河野 舞 千葉県立保健医療大学, 健康科学部, 准教授 (90586926)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 歯学 / 生体材料 / 歯周組織再生 / 自家歯牙片 / インプラント |
研究実績の概要 |
インプラント治療の前に抜歯を行うと抜歯部位の歯槽骨辺縁には骨吸収が起こるため、インプラント周囲組織の形態が経時的に変化することは避けられない。特に上顎前歯部などの審美領域では、インプラント頸部の骨吸収にともなう軟組織の退縮が審美障害につながるため、インプラント治療に対する患者の満足度を大きく下げる一因になりかねない。しかしながら、生体材料単独ではインプラント周囲組織の再生と形態の維持は困難である。本研究の目的は、上顎前歯部などの審美領域における自家歯牙片とチタンインプラントを併用したハイブリッド歯周組織再生療法の有効性を調べることである。 我々はこれまで埋入部位に十分な骨髄がある長管骨を想定して、埋入手技が容易なラット大腿骨モデルを主に用いて様々な研究を行ってきた。しかしながら、本研究課題は自家歯牙片とインプラントを併用したハイブリッド歯周組織再生を目指しているため、大腿骨ではなく下顎骨を用いて切歯部唇側骨欠損モデルを確立することとした。初年度はラット乾燥頭蓋を用いて実験用インプラントの設計ならびにインプラント埋入窩形成に用いる特注ドリルの検討を行った。試作スクリュー型純チタンインプラント(直径:1.2 mm、長さ:3.0 mm)に対して適切な埋入窩を形成するために、特注整形バー(直径:0.8、1.0、1.2 mm)と精密な操作が可能なインプラントモーターを導入した。その後、他の研究プロジェクトに用いたラット大腿骨モデルで不要となったラット下顎骨を用いて、インプラント埋入の検証を何度か繰り返した末に、ラット下顎骨切歯部唇側骨欠損モデルの妥当性を確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラット下顎骨に対して実験用インプラントの抜歯即時埋入を行う試みは今回が初めてであったが、ラット乾燥頭蓋等を用いた唇側骨欠損モデルの検証、試作スクリュー型純チタンインプラントならびに特注整形バーの準備までは予定通りに行うことができた。しかしながら、申請時の予定では初年度に実験動物へ埋入したインプラントに対するバイオメカニカル試験まで行う予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、教育と診療に費やすエフォートが増大したことや緊急事態宣言ならびに自治体独自の外出自粛期間の研究施設への立ち入り制限等により研究活動に大きな制約を受けたのため、今年度は埋入部位の検証を行う予備実験までしか実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
初年度のモデルサージェリーならびに予備実験の研究成果より、本研究プロジャクトの研究デザインが概ね妥当であることが確認されたため、初年度に検証した術式にしたがって、8週齢の雄ラットに対して、イソフルレンによる全身麻酔下にて同部の抜歯と唇側歯槽骨辺縁の部分削除を同時に行うことで、下顎切歯部唇側骨欠損モデルを準備する。次に抜歯後即時に実験用純チタンスクリュー型インプラント(直径1.2 mm、長さ3.0 mm)を同部に埋入する。創傷治癒過程におけるインプラント周囲組織の変化を詳細に観察するとともに、埋入2、4週後に微小トルク計を用いた逆トルク試験を行い、除去トルク値を測定する。さらに、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて逆トルク試験後のインプラント表面の観察を行う。なお、ラット下顎骨切歯部唇側骨欠損モデルが計画通りに進まない場合は、実験用インプラントの形状、ラットの週齢、埋入部位について変更を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定では、予備実験として埋入部位の検証を行うための組織切片の納品が年度内に完了する予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、専門業者に発注した組織切片の納品が年度内にはわずかに間に合わなかった。また、その影響で次に行う予定のバイオメカニカル試験が次年度に延期せざるを得なくなった。なお、繰り越した当該助成金は4月中にほぼ全額執行される予定である。
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