組織破壊を伴う炎症の治癒には間葉系幹細胞(MSC)が関与する。これまでにMSCと線維芽細胞の接触が炎症抑制性サイトカインであるtransforming growth factor(TGF)-βの発現を促進することを明らかにした。一方、Connective tissue growth factor(CTGF)は様々な細胞において、細胞増殖や分化に関与している。CTGFの発現はTGF-βの作用により促進されることが報告されているが、CTGFの過剰ならびに過少発現は骨形成不全を引き起こす。本年度は、MSCの骨芽細胞分化においてCTGFの影響を調査した。その結果、MSCにおけるTGF-βとCTGFの共処理はp38MAPKのリン酸化を促進することが示された。CTGFはTGF-βのレセプターへの結合を増強することが報告されている。したがって、CTGF存在下ではTGF-βの作用が増強され、p38MAPKの活性化が促進することが示唆された。さらに、TGF-βとCTGFの共処理は骨芽細胞分化マーカー遺伝子のmRNA発現を上昇させた。さらに、TGF-βはMSCの骨芽細胞分化における細胞外マトリックスの石灰化を誘導した。加えて、この石灰化はCTGFとの共存下で有意に増強され、p38MAPK阻害剤ならびにMEK/ERK阻害剤によって完全に抑制された。TGF-βはERK1/2のリン酸化を促進するものの、CTGFの存在下でそのリン酸化は抑制されることから、CTGFはTGF-βによって活性化されるMEK/ERK経路依存的に骨芽細胞分化へ関与することが示唆された。以上の結果から、CTGFはp38MAPKやMEK/ERKを含むMAPキナーゼ経路の活性化を調節することで、MSCにおけるTGF-β誘導性骨芽細胞分化を促進することが示唆された。
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