研究課題/領域番号 |
20K10018
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
谷本 安浩 日本大学, 松戸歯学部, 教授 (40312045)
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研究分担者 |
平山 紀夫 日本大学, 生産工学部, 教授 (70582518)
北川 剛至 日本大学, 松戸歯学部, 講師 (20419766)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 歯科材料 / CAD/CAM / ファイバー強化型レジン |
研究実績の概要 |
現在、歯科用CAD/CAMシステムによって歯冠修復物・歯科補綴装置を切削加工で製作するワークフローが構築されており、CAD/CAM用材料についてさらなる研究開発が望まれる。そこで本研究の目的は、歯工連携によってCAD/CAM用グラスファイバー強化型レジン(GFRP)材料の作製とその最適化を行い、高強度・高靭性を有する新規なCAD/CAM用材料を開発することである。 本年度(令和4年度)においては、強化材であるガラス繊維の補強効果の最適化を図るため、ロービングクロスを強化材とするCAD/CAM用GFRP材料(GF-1)と、それに比べて網目が細かく厚さの薄いガラスクロスを強化材とするCAD/CAM用GFRP材料(GF-2)の2種類のGFRP材料を作製した。CAD/CAM用GFRP材料の作製は、ガラス繊維にアクリル樹脂を含浸させ、ホットプレスにより加圧・加熱成形することで行った。試作CAD/CAM用GFRPについて曲げ試験を実施した結果、網目の細かいガラスクロスを強化材とするGF-2はロービングクロスを強化材とするGF-1に比べて高い曲げ特性(曲げ強さ、曲げ弾性係数)を有していることが明らかとなった。また、試作したCAD/CAM用GFRPブロック体について歯科用CAD/CAM装置による切削加工を行い、CAD/CAM冠(右上6)およびブリッジ(右上456)を製作した。市販CAD/CAM用GFRPブロック体から削り出した歯科補綴装置と同様に、気泡やガラス繊維の露出等は見受けられず、品質および切削加工性の高いCAD/CAM用GFRPブロック体を開発することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、歯工連携によりCAD/CAM用GFRP材料を作製し、そのキャラクタリゼーションおよび最適化を実施し、優れた機械的性質を有する新規なCAD/CAM用材料を開発することである。 令和2年度においては、CAD/CAM用GFRP材料の試作とその作製方法を確立することに主眼を置き、ホットプレスによる加圧・加熱成形によって熱可塑性樹脂をロービングクロスで強化したCAD/CAM用GFRP材料を試作した。その結果、簡便で成形性の高いCAD/CAM用GFRP材料の作製方法を見出した。 令和3年度においては、試作CAD/CAM用GFRP材料の機械的性質を明らかにするために、ダイナミック超微小硬度計による硬さ試験および歯ブラシ摩耗試験による摩耗特性の評価を行った。その結果、硬さ試験においてはCAD/CAM用GFRP材料の表面特性にガラス繊維の補強効果はあまり発現しないことが示唆された。一方、歯ブラシ摩耗試験において、CAD/CAM用GFRP材料は従来のハイブリットレジン系材料に比べて優れた耐摩耗性を示したことから、ガラス繊維の補強効果を確認することができた。 令和4年度においては、高機能を有したガラスクロスを強化材とし、マトリックスにアクリル樹脂を用いたCAD/CAM用GFRP材料を試作した結果、高い曲げ特性を有していることが明らかとなった。また、歯科用CAD/CAM装置を用いてCAD/CAM冠およびブリッジを切削加工した結果、試作CAD/CAM用GFRP材料は品質および切削加工性に優れていることが確認できた。 以上のように、研究遂行当初の目標を十分に達成しており、本研究は順調に進展しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた研究成果を踏まえて、更なる高強度を有するCAD/CAM用GFRP材料の開発と今後の社会実装を目指すために、本材料の高機能化に関する研究をさらに推し進める予定である。具体的には、CAD/CAM用GFRP材料について厚さ方向にガラス繊維の含有率を変化させることで傾斜機能を付与したCAD/CAM用GFRP材料を設計・作製する。また、傾斜機能を有するCAD/CAM用GFRPブロック体について歯科用CAD/CAM装置による切削加工を行い、製作されるCAD/CAM冠およびブリッジについて評価・検討する。さらに有限要素解析によってCAD/CAM冠およびブリッジの破壊メカニズムを解析的に明らかにする。以上により、本研究で作製したCAD/CAM用GFRP材料およびCAD/CAM装置を用いた切削加工により製作したGFRP製CAD/CAM冠およびブリッジについて実験的・解析的評価を行い、高強度・高靭性を有するCAD/CAM用GFRP材料の有用性についてさらに検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度(令和4年度)において、試作CAD/CAM用GFRP材料の化学的性質の評価を行ったところ、大変興味ある結果が得られた。そこで、CAD/CAM用GFRP材料の機械的性質のみならず化学的性質を含めた研究成果について、今後、学術論文に投稿することを予定している。そのため、それらに係る経費を今後に繰り越すために次年度使用額が生じた。すなわち、次年度に繰り越した費用については今後のさらなる研究成果の発表(論文投稿)に係る費用などに充てる予定である。
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