研究課題/領域番号 |
20K10023
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研究機関 | 大阪歯科大学 |
研究代表者 |
有田 憲司 大阪歯科大学, 歯学部, 名誉教授 (20168016)
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研究分担者 |
阿部 洋子 大阪歯科大学, 歯学部, 講師 (00325268)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | プラズマイオン注入法 / PBII法 / PMMA / アルゴンガス / 銀 / フッ素 / 表面物性分析 / 抗菌性試験 |
研究実績の概要 |
本年度は、1)PBII法を用いて、Ar群(Arガス)、Ar/F群(95% Ar / 5% F2の混合ガス)、Ar+Ag群( Arと銀メッシュ)およびAr/F+Ag群F( 95% Ar / 5% F2の混合ガスと銀メッシュ)のPMMA試料の作製をした。2)表面物性の分析としての①試料表面の元素組成分析および化学結合状態の分析、②表面エネルギー分析および③表面性状観察を実施した。さらに、3)口腔常在菌に対する機能の検証として①Streptococcus mutans(S. mutans)に対する抗細菌性およびCandida Albicans(C. albicans)に対する抗真菌性の検討も行った。 その結果, XPSスペクトルの分析では,Ar/F群およびAr/F+Ag群に689.0付近のピーク(F1), Ar+Ag群およびAr/F+Ag群に369 eV付近のピーク(Ag3d)と573.0 eV 付近(Ag3p)の2つのピークを認め,Arガスを使用したPBII法によりPMMA板にAgイオン単独でもF・Agイオン同時でも注入できることが明らかとなった。水接触角は,Ar群,Ar/F群,Ar+Ag群,およびAr/F+Ag群は,対照群に比較して有意に増加していることを認め,対照群は44.1 mJ/m2,Ar群は62.4 mJ/m2,Ar/F群は37.7 mJ/m2,Ar+Ag群が36.2 mJ/m2,Ar/F+Ag群が43.2 mJ/m2であることを明らかにした。AFM測定による表面粗さ値は,対照群が1.66±1.17nm,Ar群が1.69±0.19nm,Ar / F群が3.54±1.78nm,Ar+Ag群が1.01±0.04nmおよびAr/F+Ag群が4.94±0.60nmであり,本法によるFイオンとAgイオン注入の試料表面への影響は6 nm以下で極めて少ないことを明らかとなった。ATP発光分析による試料の口腔常在菌に対する機能の検討では,Ar+Ag群およびAr/F+Ag群はS. mutansへの抗菌活性があることを示し,とくにAr/F+Ag群が最も高い抗菌活性を明らかにしている。しかし,今回の条件下では C. albicansに対する抗真菌性は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画書に記載していた2020度計画内容は全て実施・完了しており、2021年度~2022年度計画の内、抗菌性試験についても実施・完了した。これらの研究成果は、2つの国内学会で発表を行い、国際科学雑誌(Materials 2020; 13(20))に掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、研究は順調であり期待した成果がえられている。今後は、研究計画書に従って残りの細菌性付着試験および付着細菌離脱試験を実施していく。また、Agイオンの注入条件を検討を追加する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスのパンデミックの影響により、参加予定であった国際学会が中止や国内学会のWEB開催により、旅費が未使用となったことが主な理由である。次年度は、研究計画書に従って予定通り使用することに加え、PCの購入の追加使用を計画している。
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