研究課題/領域番号 |
20K10028
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
古屋 純一 昭和大学, 歯学部, 准教授 (10419715)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 栄養 / 緩和ケア / 口腔機能 / 摂食嚥下 |
研究実績の概要 |
近年の超高齢社会では認知症等の進行性疾患による低栄養や看取り状態にある高齢者が急増し,従来とは異なった視点での食やQOLの支援が必要となり,医療・介護の多職種による高齢者の生活支援が重要である。 特に、入院患者の低栄養は身体機能の低下をもたらし、死亡率の上昇に影響を及ぼすとされている。栄養サポートチーム(Nutrition Support Team: NST)による栄養管理は入院患者の低栄養改善に効果的とされ、歯科医療従事者の参加が求められているが、NST対象患者の口腔環境についてはいまだ不明な点も多い。そこで本研究では、急性期病院NST対象患者の口腔環境の特性を明らかとすることを目的に、口腔環境の包括的な指標であるOHATに着目し、口腔環境の悪化に関連する要因を検討した。 NST対象患者のうち20歳以上でデータ欠損のない者を対象に口腔評価、全身状態の評価を実施した。統計学的検討には連続変数にはMann-Whitney U検定、カテゴリー変数にはχ2検定を用いて群間比較を実施した。さらに、口腔環境に関連する要因を特定するため、従属変数をOHAT合計点とした重回帰分析を実施した。 その結果、口腔環境良好群と口腔環境不良群を比較すると、不良群においては、年齢が有意に高値であり、栄養摂取方法とDSSが有意に低値であった。また、口腔環境に関連する要因として、年齢、BMI、栄養摂取状態が独立してあげられた。急性期病院NST患者においては、口腔環境に問題を抱えるものが多く、口腔環境の悪化に食事摂取状況や栄養状態が関連しうることが示唆された。以上より、NSTへの歯科参画の有用性が示され、歯科が口腔管理を適切に行い口腔環境の改善を図ることで、低栄養改善や経口摂取の確立に寄与できる可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID-19の感染蔓延が収束しない影響を受けて研究計画を一部変更し、在宅に対する訪問診療における調査は一部中止し、感染対策が比較的容易な入院患者のみを対象として、低栄養および終末期患者の口腔機能管理を中心として研究を実施していくこととした。 2020年度は、NST対象となる入院中の低栄養患者を対象とした横断調査に注力し、255名の調査を行うことができ、統計学的に十分なパワーが得られる数となった。すでにNST患者の口腔機能に関しては、研究発表を行い、その一部の内容を論文として投稿中である。また、緩和ケアが必要な入院患者に対する横断調査も一部開始し、そのごく一部であるが研究発表を行っている。 以上のことから、本研究課題は、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19の感染蔓延が収束しない影響を受けて研究計画を一部変更し、在宅に対する訪問診療における調査は一部中止し、感染対策が比較的容易な入院患者のみを対象として、低栄養および終末期患者の口腔機能管理を中心として研究を実施していくこととした。 2021年度は、引き続き、感染対策が比較的容易な入院患者である、低栄養患者および緩和ケアが必要な患者を対象とした調査に注力し、研究を推進していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の感染蔓延が収束しない影響を受けて研究計画を一部変更し、また、学会発表はすべてWEBによるオンライン発表となったため、旅費の使用がなくなったことで、本年度使用額が減少し、次年度使用額が生じた。 2021年度においても、在宅に対する訪問診療における調査は一部中止し、感染対策が比較的容易な入院患者のみを対象として、低栄養および終末期患者の口腔機能管理を中心として研究を実施していくこととしている。それらに使用する物品費を中心に助成金を使用する。また、学会発表についても、一部再開の可能性があるため、旅費としての支出もあると考えられる。さらに、英語論文を投稿予定のため、英文校正費用としての支出を検討している。
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