研究課題/領域番号 |
20K10028
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
古屋 純一 昭和大学, 歯学部, 准教授 (10419715)
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研究分担者 |
桑澤 実希 昭和大学, 歯学部, 講師 (10343500)
鈴木 啓之 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 特任助教 (80801539)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 緩和ケア / 口腔機能 / 義歯 / 嚥下 / 終末期 / 緩和ケア / NST / 脳卒中 |
研究実績の概要 |
近年の超高齢社会では,全身疾患によって低栄養や看取り状態にある高齢者が急増している.そのため,従来とは異なった視点からの口腔や食事に関する支援が多職種連携医療においても重要である. 緩和ケアを受ける終末期では,心身機能の低下が生じ,食事の問題や,口腔乾燥に代表される口腔の問題が生じやすく,QOLに影響を与えると推察される.特に,癌終末期においては、患者のQOLを改善し,より苦痛の少ない終末期を過ごすことを目的とした多職種連携による緩和ケアが効果的であることが知られているが,口腔乾燥など口腔の問題が生じることも多く,緩和ケアに歯科医療従事者が積極的に参画することが近年求められている.そこで本研究では,緩和ケアの対象となった終末期癌患者の口腔環境および口腔機能を明らかにすること,さらにはそのような患者における口腔環境に影響を及ぼす因子を明らかにすることを目的として,横断調査を行った. その結果,緩和ケア対象癌患者121名の口腔環境は悪化しており,特に軟組織である舌,歯肉・粘膜や,唾液,口腔清掃の項目に問題が認められた.また,咀嚼に重要な臼歯部の咬合支持がない場合も多く,義歯の使用も十分ではなかった。一方で,本研究対象者の,嚥下機能は比較的維持されており,対象者の46%が経口のみでの栄養摂取が可能であり,経管栄養を併用しているものを含めると62%が何らかの形で経口による栄養摂取が可能な状態であった.また,口腔環境の悪化は高年齢,意識レベル悪化,短い予後,低い栄養摂取方法と有意に関連していた.以上のことから,多職種連携医療である緩和ケアにおいては,患者の予後レベルや栄養摂取方法を考慮に入れながら,専門的な歯科介入を行っていくことの重要性が示唆された.また,前年度に継続して,低栄養患者および脳卒中患者における口腔と栄養摂取法に関する調査も一部継続した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は,緩和ケアの対象となる終末期患者を対象に横断調査を行い,口腔と栄養摂取法,予後との関連を明らかにすることができた.その結果,緩和ケアと口腔機能に関する2つの論文を発表することができた.また前年度に行ったNSTの対象となる低栄養患者を対象とした調査も継続しており,2本の論文を発表することができた.低栄養患者および終末期患者の口腔機能に関する合計4本の論文を発表することができたため.また,脳卒中患者に関して一部検討した内容についても1本の論文を発表することができたため,当初の計画以上に進展しているとした.
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画以上に研究結果の総括が進んでおり,特に横断調査に関してはすでに4つの論文を,縦断調査については1つの論文を国際誌に発表することができた.そのため,最終年度においては,これまでの研究を総括しながら,低栄養患者および終末期患者の口腔と栄養に関する縦断調査の内容をまとめる予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の感染蔓延が収束しない影響を受けて,前年度より研究計画を一部変更し,また学会発表がすべてオンライン発表となったため,旅費の使用がなくなったことで,本年度使用額が減少し,次年度使用額が生じた.2022年度においても,在宅に対する訪問診療における調査は一部中止し,感染対策が比較的容易な入院患者のみを対象としたデータをまとめる.特に,低栄養患者,終末期患者,脳卒中・認知症などの患者を対象とした横断調査に加えて,縦断調査の内容をまとめて,それらの研究発表に関連する費用や,追加データの消耗品,事務作業に用いる物品費を中心に助成金を使用する.
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