研究課題/領域番号 |
20K10041
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
島崎 伸子 岩手医科大学, 歯学部, 常任研究員 (30337258)
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研究分担者 |
山森 徹雄 奥羽大学, 歯学部, 教授 (30200851)
佐藤 しづ子 東北大学, 歯学研究科, 助教 (60225274)
駒井 三千夫 東北大学, 農学研究科, 名誉教授 (80143022)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 味覚障害 / 炭酸脱水酵素 / 亜鉛 / イムノクロマト法 / 唾液 / フレイル / 味覚 / POCT |
研究実績の概要 |
新型コロナウイルスは治った後も、嗅覚・味覚障害が続くケースが多数報告されている。味覚障害は食欲低下を招き、「フレイル」を引き起こす要因のひとつといわれている。味覚における微量元素である亜鉛の役割は大きく、味覚障害の約70%は亜鉛に関連する。薬剤服用や加齢変化に起因する亜鉛欠乏は高齢者に多くみられ、超高齢社会となった我が国において、そのスクリーニングの重要性が増大している。しかし味覚障害に対する一般的な診断法である血液採取による亜鉛値の測定には、侵襲を伴う上に、その判定や治療法の決定に時間を要するという臨床上の欠点がある。また、必ずしも血清亜鉛濃度は味覚障害を的確に表す指標とならないとの報告もある。 そこで、本研究は、亜鉛欠乏による味覚障害に対して迅速にスクリーニングすることを目的としている。すなわち、唾液を用い、簡便かつ短時間で評価可能な“免疫学的測定法”を開発する。この新規指標の開発により、患者の主訴を早期に解決する手段となりうる。本研究により、味覚障害により引き起こされる高齢者の「フレイル予防」に貢献し、健康寿命の延伸に対し、大きく関わると考える。 これまで耳下腺唾液中37kDa亜鉛結合タンパク質である炭酸脱水酵素(CA)Ⅵ型 (Gustin)が味覚機能に関与するとの報告に基づき、ELISAによるCAⅥ濃度を検出する特異的方法を確立してきた。さらに、血清亜鉛値測定やELISAは時間を要するが、医療現場ではチェアーサイドにて簡便・迅速な治療方針の決定が求められることも多い。そのため、味覚障害のスクリーニング法としてイムノクロマト試薬による体外診断薬の開発を目的とし、CAⅥポリクローナル抗体を作製して唾液に対する反応性試験、イムノクロマト試薬測定値と血清亜鉛値との相関について検討してきた。 よって、今後本抗体を利用し、亜鉛欠乏性味覚障害の診断の根拠になりうることが示唆されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
和2年度は、味覚障害者の耳下腺唾液をサンプル採取、資料採取を中心に行っていた。しかしながら、令和3年度、4年度は新型コロナウイルスの影響により、連携している東北大学の病院の一時閉鎖、唾液採取の中止、連携しているイムノクロマト法開発などが滞っているのが現状である。 その状況下において、主として、ポリクローナル抗体もしくはモノクローナル抗体を用いた場合における耳下腺唾液を検体としたイムノクロマト試薬検査値の比較、基本味に対するテーストディスク値とモノクローナル抗体を用いたイムノクロマト試薬測定値の関連、について検討中である。さらに、味覚障害患者では唾液中のCA活性および唾液中の亜鉛・タンパク質濃度が健常者と比べ有意に低下していることも共同分担者により報告されている。 イムノクロマト法は 新型コロナウイルス抗体検査キットのように急速に普及し、その役割や認識は 広まっている。しかし味覚障害の判定においては、外科的侵襲や時間のかかる血液判定をおこなっているのが、現状である。そこで、味覚障害患者の耳下腺唾液中タンパク質濃度の測定をイムノクロマト法にて行うことが、スクリーニングの一助になり、患者の主訴を早期に解決し、社会復帰のための一助となりうると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
当面、唾液採取に関する安全性の確立を行い、環境を整えることが第一優先となる。その後、現在まで行っているポリクロ―ナル抗体やモノクローナル抗体を用いたイムノクロマト法をより広く臨床応用するため、安定した抗体を用いたイムノクロマト法の開発を目指す。また、データの定量化を計るためELISA法も同抗体にて構築し、味覚障害のイムノクロマト値の基準値を設定し、新た指標を抽出することを目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス影響により、東北大学との交通費、学会発表、唾液採取による出張などが減少。さらには唾液採取がこれまでは困難であったため、使用額が生じた。
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