研究実績の概要 |
本研究は異なる量の米飯摂取時に,“よく噛むこと”が咀嚼・嚥下動態に与える効果の検証を目的としている.本年度は,“よく噛むこと”が咀嚼時筋活動に与える影響を検証した.健常成人男性を対象として,バリウム含有米飯(8, 12, 16g)を自由咀嚼とよく噛むの2条件で摂取し,両側咬筋,舌骨上筋群から表面筋活動電位と嚥下造影を記録し,咀嚼・嚥下時の筋活動と食塊動態を評価した.全ての摂取量において,よく噛むことにより咀嚼回数および咀嚼時間は増加し,咀嚼サイクル時間は短縮した.咬筋活動量は12gのみよく噛むことで小さくなった.一方,舌骨上筋群活動量は8gと12gでよく噛むことで小さくなったが,16gでは差がなかった.咀嚼後半の舌骨上筋活動は食塊形成に関与することが示唆されていることから,咀嚼時期を咀嚼回数に基づき前期・中期・後期に3分割し,舌骨上筋群活動を解析した.舌骨上筋活動量は,8gと12gの全時期でよく噛むことにより小さくなったが,16gは全時期で差がなかった.舌骨上筋持続時間は8gの中期・後期および12gの全時期でよく噛むことにより短縮し,舌骨上筋最大振幅は8gの中期および12gの中期・後期でよく噛むことにより減少した.初回嚥下時の推定食塊量は16gのみよく噛むことにより多くなり,摂取量に対する初回嚥下量割合は16gの自由咀嚼が他の5条件よりも小さかった.8gと12gでは,よく噛むことにより中期・後期の舌骨上筋活動量が減少し,食塊形成が容易にできていると推察された.一方,16gではよく噛むことにより自由咀嚼でみられた初回嚥下量割合の減少が改善されており,食塊形成を十分に行えていると考えられた.
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