研究課題/領域番号 |
20K10077
|
研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
堀田 康弘 昭和大学, 歯学部, 准教授 (00245804)
|
研究分担者 |
中納 治久 昭和大学, 歯学部, 准教授 (80297035)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | CAD/CAM / 3Dプリンタ / デジタルデータ / コンポジットレジン |
研究実績の概要 |
現在、歯科で利用されてきた貴金属の高騰が、日本の保険診療において大きな問題となっている。そのため、2016年に始まったCAD/CAM冠保険適用がインレー修復にまで広がることとなった。世界的に見ても、こうしたデジタルによる歯冠修復の流れは急速に進んでおり、そのデータ管理に関しては電子カルテシステムを作成しているメーカーが、それぞれ独自に実装している。しかし、互換性を持った形で患者データをはじめとする診療内容の相互運用については、一定の基準がない。2018年にISO 18618が発行され、CAD/CAMシステムで使用するデータの相互運用規格が制定されたが、まだ、それを全面的に採用しているメーカーは登場していない。その一番の理由としては、現在オープンシステムとしてやり取りされているデータが、単に製作する形状データにすぎないだけでなく、進歩の速い歯科用CAD/CAMシステムにおける利用形態の実情に合っていないことがあげられる。そこで、日本の実情に沿う項目をISO/TC 106会議に追加改定要求している。これにより、CAD/CAM冠やインプラント、矯正領域のデータも、電子カルテシステムに統合可能とし、国の成長戦略でもあるビックデータ活用の足がかりともなるため、現在、ISO/TC 106国際会議において、これらデータ項目を追加した改訂作業を行っている。 また、3Dプリンタ用材料として、現在薬機承認を受けている液槽光重合によるレジン系材料は、CAD/CAM冠に並ぶほどの強度や審美性が得られないため、CAD/CAMシステムによる歯冠修復材料としての利用ができない状況にある。そこで、現在材料噴射方式により、自由に色調コントロールができ、強度向上のためのフィラーを配合したコンポジットレジン材料の機械的性質と安全性の評価を行い、クラスⅡの管理医療機器として薬機法承認を目指している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
デジタルデータの規格化に関しては、令和3年中にISO/TC106国際会議において、現在使用されているデータ項目から新たに抽出したものを追加し、現在、ISO18618:2022発行の最終調整に入っている。これが正式に発行されることで、最終的なデータ変換テーブルの設定が可能となる。一方で、3Dプリンタ材料の開発に関しては、非常事態宣言による材料入手や試験片作製に時間がかかっている。そのため、機械的性質や生物学的性質、積層造形体の微細形状の確認、フィラー含有率の調整といった基礎データの収集を行い薬機承認の申請を受けるための準備を行っている段階である。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年9月のISO/TC106国際会議において、ISO 18618の改訂項目の調整について議論され、現在利用されているインプラント系治療と矯正治療に関連する項目をリストアップし組み入れる作業が行われた。特に、3Dプリンタを用いたサージカルガイドや、矯正用アライナーの項目が新規に追加されたことで、実際の臨床現場での利用状況に大幅に近づけることができている。これが発行されれば、当初予定していたデータの汎用システム化が実現可能となる。 一方で、当初予定していた液相光重合方式の3Dプリンタ用材料に関しては、コロナ禍の影響で材料提供が難しくなっていたことから、まったく新規にインクジェット方式の3Dプリンタ材料を入手したことから、この材料を用いた機械的性質や生物学的性質について検討していくこととなる。この材料では、従来の液相光重合方式で問題となる色調再現に関する問題や、材料の使用効率などの問題が解決されると考えられるため、早急にデータを収集し、薬機承認が受けられるように研究を行っていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19により、3Dプリンタ関連で予定していた材料、並びに、機器の購入予定品目の入手が困難となったことと、学会発表や国際会議などがオンライン開催方式となったことから旅費の支出が無くなったため、当該年度の使用実績がなかった。現在、新規材料の提供元との研究開発を始めていることから、次年度における使用が見込まれる。
|