付加加工による製作法として液槽光重合(Vat Photo Polymerization: VPP)方式の装置が活用されるようになってきたが,薬機法でクラスⅡ承認を受けた歯冠用硬質レジンや義歯床用レジン材料は,強度面や色調面から主に暫間被覆冠としての利用にとどまり,歯冠補綴材料として十分に活用されている状況ではない.そこで,フルカラーで造形が可能な材料噴射(Material Jetting: MJT)方式の光重合樹脂材料の試作を行い,現在上梓されているVPP方式と比較して,優れた特性を持つことを発表してきた.本研究では,フルカラー積層可能なMJTで使用する原色系添加材が、機械的性質や吸水量及び溶解量に与える影響について評価し,色調再現用顔料を添加することが機械的性質の低下につながる可能性があることが分かった.そこで,これら色の三原色と無色,白色の5種類の積層用樹脂インクを組み合わせて調合し,エナメル質用,象牙質用(VITAシェードでA2,A3)の,歯冠補綴用途で利用可能な色調の組成のレジンを用意し,MJT方式の積層造形により,それぞれ単体の場合と,それらを組み合わせたグラデーション(A2複合,A3複合)の試験片を作製し,組み合わせによる機械的性質の変化,ならびに吸水量・溶解量などの違いについて確認をした.その結果,安定したデータが得られることが確認でき,単冠使用であれば,現在保険適用材料として,特に審美領域で利用される機能区分ⅣのCAD/CAM冠材料に近い性質を発揮できることが分かった. また,CAD/CAMデータの相互運用性については,3Dプリンターデータの運用を含むデータ形式の規格が,ISO 18618(Ed.3)として最終承認段階に入った.しかし,3Dプリンターの精度評価システムについて,現在,新たな規格開発を行っており,これを含めた改定を視野にさらなる検討を進めている.
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