研究課題/領域番号 |
20K10080
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
中山 渕利 日本大学, 歯学部, 准教授 (10614159)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 嚥下機能 / 咀嚼機能 / 認知機能 / 骨格筋量 / サルコペニア |
研究実績の概要 |
令和2年度は、千葉県柏市にある老人保健施設で調査を行った。調査当時の入所者総数は91名で、そのうちペースト食を摂取している者(8名)、咬合できる歯(義歯含む)が無い者(9名)、ご家族の同意を得られなかった者(15名)、ペースメーカーを装着している者(1名)、その他に体調等を理由により調査を控えた者(7名)を除外した計51名(平均年齢89.7歳、男性13名)を対象者とした。対象者に対して行ったSaku-Saku Testの結果では陽性10名、陰性39名、体調不良等を理由に行えなかった者2名であった。陽性と陰性の対象者の平均値を比較した結果、下記の通りとなった。 陽性vs陰性:年齢(91.0歳 vs 89.2歳)、要介護度(4.0 vs 2.7)、HDS-R(7点 vs 15.1点)、ABC認知症スケール(61.2点 vs 80.0点)、Body Mass Index(20.5 kg/m2 vs 21.5 kg/m2)、SMI(5.8 kg/m2 vs 6.2 kg/m2)、握力(9.2 kg vs 11.6 kg)、ふくらはぎ周囲長(27.3 cm vs 29.6 cm)、MNA-SF(7.4点vs 7.6点)、舌の厚み(40.6 mm vs 39.3 mm)、オトガイ舌骨筋の厚み(6.7 mm vs 7.0 mm)、咬筋の厚み(9.6 mm vs 10.2 mm) 本調査結果において、Saku-Saku Test陽性者は要介護度が高く、認知機能や骨格筋量が低下している傾向を認めたが、被験者数が少ないため結論を出すには至らなかった。今後も調査を継続していく予定である。また、過去にサルコペニア患者に対して収集した筋電位のデータを解析したところ、サルコペニアによって嚥下機能が低下した患者では、嚥下時に顎下の筋肉の活動時間が延長することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度は所属機関の倫理審査を受けたのち、大学院生および歯科衛生士に協力してもらってデータ収集を行うことを予定していた。当初は令和2年度前半で調査を行う予定であったが、新型コロナウイルスの蔓延防止のため調査開始日を遅らせ、感染対策を十分行ったうえで実施することになったが、目立ったトラブル無く年度内に調査を終えることができた。調査を行った施設は千葉県にある老人保健施設で、51名の被験者の調査を行うことができた。調査項目についてもおおむね予定通りであった。 また、当初の計画にはなかったが、過去にサルコペニア患者に対して収集したデータから、サルコペニアによって嚥下機能が低下した者では、嚥下時に嚥下関連筋の筋活動が延長する可能性が明らかになった。この研究成果については、国際雑誌Clinical Interventions in Agingに掲載された。 上記の理由により、進捗状況としてはおおむね順調に進展しており、令和3年度の調査もおおむね予定通りに行えるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
1. 都内の特別養護老人ホームで調査 令和2年度に調査した千葉県の施設では必要な人数に達しなかったため、新たに都内の特別養護老人ホームに協力いただいて調査を行うことにした。対象者はおおよそ70名ほどを予定しており、複数回に分けて実施する予定。調査項目は令和2年度と同様であるが、この施設ではソフト食(ムース食)を提供している入所者がいるため、そのような対象者には赤ちゃん用の煎餅(唾液で溶出するもの)を用いて検査を実施することを予定している。 2. 令和2年度に調査を行った施設での追跡調査 令和2年度に対象者となった方が1年間の間に窒息や誤嚥性肺炎の発症がなかったか聞き取り調査を行うとともに、再び同じ検査を実施して経口摂取状況、認知機能、骨格筋量および嚥下関連筋の筋量の1年間の推移を調査し、これらが咀嚼能力にどのような影響を与えるか検討する。 3. 令和2年度で収集したデータの解析 令和2年度に収集したSaku-Saku Test中の下顎運動の画像データをモーションキャプチャで解析し、軽度認知症者と重度認知症者の下顎運動の違いについて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画どおり経費を使用したところ、端数が生じた。 次年度への繰越金は令和3年度の助成金と合わせて、実験材料の購入費に使用する予定である。
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