研究課題/領域番号 |
20K10081
|
研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
大久保 力廣 鶴見大学, 歯学部, 教授 (10223760)
|
研究分担者 |
新保 秀仁 鶴見大学, 歯学部, 学内講師 (40514401)
鈴木 恭典 鶴見大学, 歯学部, 准教授 (70257335)
栗原 大介 鶴見大学, 歯学部, 学内講師 (70535773)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | トポロジー最適化 / 3D形状データ / CAD / CAE / CAM / 積層造形 / 人工知能 |
研究実績の概要 |
本年度は,自然界が作り出した理想的な構造を補綴装置に再現するための最適構造設計法を用いて,補綴装置のフルデジタル製作システムの中にトポロジー最適化と口腔諸組織の3次元有限要素応力解析を導入し,ジェネラティヴデザインとレーザー焼結積層造形を組み合わせたデジタルワークフローを構築するための検討を行った. 本研究で導入する最適構造設計法とは「使用が想定される設計空間上の制約,荷重,拘束条件の下で,最も効率の良い材料分布を人工知能(AI)にデザインさせ位相幾何学的に展開する」ことであり,設計過程の中でCAD(Computer Aided Design)とCAE(Computer Aided Engineering)を繰り返し展開し,人工知能(AI)アルゴリズムにデザインを任せた「トポロジー最適化(ジェネラティヴデザイン)」と呼ばれる最新技術である.トポロジー最適化により①無限の自由度を有する構造,②高いカスタマイズ性の形状,③金属使用量の大幅軽減,④合理的,効率的最適構造設計が具現化できる.本研究はこのトポロジー最適化と積層造形をワンプロセスとする新規補綴装置の製作術式を開発,応用するものである. 申請当初の計画では,初年度に欠損を有する被験者の固有データをもとに口腔内の3D形状データを作成し,咬合力,被圧変位量,支台歯の分布状態,残存諸組織の負担能力等をCAD/CAEを組み合わせたソフトおよびジェネラティヴデザインソフトから人工知能(AI)によりCADとCAEを繰り返し,咀嚼時の加力様相を可視化した最適設計を行い,検討を行う予定であった.しかし,被験者の固有データを使用するにあたり倫理審査委員会の承認を得る必要があるが,承認がまだ得られていないのが実情である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究申請当初は,初年度に口腔内データを基にした静的荷重のモデル化と位相幾何学解析を検討する予定であった.しかし,被験者の固有データを使用するにあたり倫理審査委員会の承認がまだ得られていない. そのため,昨年度は,最適構造設計の前にまずCAD/CAMによる義歯の製作精度を高めることを目的とし,上顎3Dプリント義歯の適合精度に関する基礎的検討を行った.その結果,サポートの植立法や造形角度の相違により義歯の適合性は大きく影響を受けることを確認した.また,CAD/CAMにより製作したクラスプの適合精度に関しても詳細な検討を行い,十分臨床応用可能であることを実証した.これらの結果をもとに,3D検査および測量用ソフトウェア(Geomagic ControlX)を用いて,当講座の基礎実習にて使用している欠損顎模型から補綴装置を再現するための最適構造設計をパーソナルコンピュータ上でシミュレーションモデルを構築した.また,最適設計された補綴装置が,機能時に支台歯の負担圧配分に及ぼす影響について実験的に検証するため,小型6軸力覚センサ(MMS101)を購入した. また,最適構造設計の臨床的トライアルとして,アミロイドーシスによる巨大舌を有する患者に対して,IOSを用いた光学印象を行い,咬合接触を付与するための咬合挙上副子の設計を行った.得られたSTLデータをもとに,グラスファイバー強化型レジンをミリング加工し,実際に装着した結果,挙上副子のような単純な構造であっても最適化された設計により十分な強度と耐久性を確認した.その結果を日本デジタル歯科学会第12回学術大会と日本補綴歯科学会第130回記念学術大会で発表した.
|
今後の研究の推進方策 |
欠損被験者の固有データをもとに口腔内の3D形状データを作成し,咬合力,被圧変位量,支台歯の分布状態,残存諸組織の負担能力等をCAD/CAEを繰り返し,咀嚼時の加力様相を可視化したパーシャルデンチャーフレームワークの最適設計を行う.その後,小型6軸力覚センサ(フォース3軸,モーメント6軸)を全ての支台歯に設置し,機能時の応力分布を測定する.本センサはMEMSチップと金属構造体のハイブリット構造により6軸検出が可能であり,従来型と最適設計されたパーシャルデンチャーのわずかな剛性の差による支台歯負担が検出可能と考えている.
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究申請当初は,初年度に口腔内データを基に3D形状データを作成し,シミュレーションプロセスの自動化と形状化を繰り返し行う事により位相幾何学解析により検討を行う予定であったが,現状では被験者の固有データを準備できていない.そのため,材料である純チタン粉末の購入及び純チタン積層造形委託費の使用が出来なかったこと.また,新型コロナウイルス感染症の感染拡大により,各種学術大会が集合型から誌上開催やWEB開催に変更になったため,計上していた旅費の使用ができなかったことにより当初予定していた使用額に差が生じた.次年度はデータ分析等で使用する事務用品の購入費用とする予定である.
|