研究課題
2021年度では、2020年度に確立するこができたSA処理cpTi(純チタン(cpTi)表面上に陽極酸化・水熱処理を施して製作した傾斜機能型ナノハイブリッドチタン)表面上におけるアルブミン固定化処理法(タンパク質:Alb)を用いて、in vitro実験系によるラット由来歯髄幹細胞(rDPSCs)の分化能について評価することを目的に実施した。すなわち、SA処理cpTiの機能特性向上を目的として、SA処理cpTi表面にAlb(濃度:25mg/mL)を吸着固定化処理後、rDPSCsを7日間培養し、CCK-8を用いた細胞増殖能試験とALP assay kit(骨芽細胞分化マーカ―)を用いたALP活性試験を実施し、rDPSCsの分化能について分析評価した。対象として未処理cpTiと陽極酸化処理を施したAO処理Tiを用いた。各種材料上におけるrDPSCs分化能は、未処理cpTiとAO処理cpTiに比較してSA処理cpTi表面上では一細胞あたりのALP活性値が有意に高い傾向を示した。この現象は、当研究グループの先行研究で得られたSA処理cpTi表面上(Alb未固定)における培養7日後のrDPSCs分化能と同様の傾向を示していた。SA処理理cpTiの表面性状は、未処理cpTiとAO処理cpTi表面性状とは全く異なり、表面上には水酸基を含むナノ構造様の陽極酸化皮膜上に六方晶系のハイドロキシアパタイト単結晶体が被覆しており、この表面表面性状(形状特性と物理化学的特性)にAlbが吸着固定化されることでrDPSCs分化能が有利に機能したこと考えている。したがって、SA処理cpTi上にAlb吸着固定化処理を施すことは、SA 理cpTiが持つ機能性を一層向上させ、骨芽細胞系の分化促進に有利な影響を与えることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
申請者らは、SA処理cpTi(傾斜機能型ナノハイブリッドチタンインプラント)表面性状の機能特性をさらに向上させることを目的として、新規ハイブリッド型インプラントの開発を目指している。2021年度では、2020年に表面固定化処理法に有効な各種物質の絞り込みを行うことができAlbが有効な物質であることが明らかとなったことから、SA処理cpTi表面上に固定化処理を施行してALP活性を実施することが可能となったと考えている。続く2022年度では、電子顕微鏡による形態学的分析の他、骨芽細胞分化マーカを増やして遺伝子発現解析を加える予定である。
ラット由来歯髄細胞(rDPSCs)を用いて以下の研究を行う予定である。SA処理cpTi(傾斜機能型ナノハイブリッドチタンインプラント)インプラント表面上における細胞の形態学的分析、骨芽細胞分化検索のための遺伝子発現解析、動物実験を予定している。
2021年度の研究では、cpTi, AO 理cpTi, SA 理cpTiの各実験試料表面上にアルブミン(Alb)を吸着固定させ、各試料の表面性状に関するrDPSCsの分化能に関する検討を行った。その結果、SA処理cpTi表面上では細胞分化能が他の試料に比較して有意に高い値を示す傾向が確認でき、2021年度に予定していたデータを取得することができた。したがって、当初の目的とする結果が取得できたため、その分の使用額については、翌年度に実施予定として計画しているrDPSCsの骨芽細胞分化に関する実験系と動物実験のための予備実験実施に充てることが可能となり、実験回数を増やすことが可能となった。したがって、翌年度への使用金額分は予備実験に使用する予定であり、使用計画上は問題はなく適切に執行していると考える。
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