研究課題/領域番号 |
20K10082
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
武部 純 愛知学院大学, 歯学部, 教授 (50295995)
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研究分担者 |
黒田 健介 名古屋大学, 未来社会創造機構, 特任教授 (00283408)
本田 雅規 愛知学院大学, 歯学部, 教授 (70361623)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 歯科補綴学 / 歯幹細胞 / 新生骨形成 / 純チタン / 口腔インプラント / 表面処理 / 陽極酸化水熱理チタン / 傾斜機能型ナノハイブリッドチタンインプラント |
研究実績の概要 |
2022年度では、SA処理cpTi表面上におけるアルブミン固定化処理法(タンパク質:Alb)について、共同研究者による先行研究データと合わせて検証した。その結果、Alb水溶液濃度によるAlb吸着量は、10mg/mLのAlbでは吸着量は5ng/cm2程度となり、一方、25mg/mLのAlbでは吸着量は15ng/cm2となることを確認した。さらに、Albの濃度と試料表面上における吸着量との関係では、濃度25mg/mL以上では吸着量はプラトーに達することが確認できていることから、SA処理cpTi表面上に固定するAlb至適濃度は25mg/mLとして、in vivo実験系を施行してくこととした。2022年度では、in vivo実験系構築のために必要なデータ取得を目的として、11週齢雄性SDラット頭頂骨の左右に試料移植のための窩洞を形成後、SA処理cpTi(直径4.1mm)を埋入し、片側のSA処理cpTi上にラット由来歯髄幹細胞(rDPSCs)を移植した。埋入・移植4週間後にμCTにより新生骨形成を確認後、試料を含む周囲組織を採取した。μCT及び電子顕微鏡による観察の結果、SA処理cpTi埋入群とSAcpTi埋入+rDPSCs移植群では、共にSAcpTi表面上に硬組織の形成が確認された。また、SAcpTiを含む周囲組織より組織切片を作成後、Toluidine Blue O染色による観察を行った結果、両群では、共に新生骨の形成が確認された。骨接触率を分析した結果、両群では有意差を認め、SAcpTi埋入+rDPSCs移植群では高い結果となった。この結果は、SA処理により形成されたHA結晶を含むナノ構造を有する陽極酸化被膜の物理化学的な表面性状が骨形成過程に影響を与えたと考えられ、rDPSCの移植はSA処理表面上での新生骨形成の促進に有効であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者らは、SA処理cpTi(純チタン(cpTi)表面上に陽極酸化・水熱処理を施して製作した傾斜機能型ナノハイブリッドチタン)表面性状の機能特性をさらに向上させることを目的として、新規ハイブリッド型インプラントの開発を目指している。2022年度では、2021年度にSAcpTi表面上に固定したアルブミン(Alb)の水溶液濃度を再検証した結果、実績概要に記載したように本研究計画に適した濃度であることが確認できた。これにより、2022年度以降の研究計画では、25mg/mLのAlb水溶液を実験に供することとし、2022年度はin vivo実験系を構築してSA処理cpTi上でのrDPSC移植による新生骨形成の促進効果を確認することができた。続く2023年度では、2022年度に実施したin vivo実験系を用いて、SA処理cpTi(Alb固定)埋入群とSAcpTi(Alb固定)埋入+rDPSCs移植群におけるSA処理cpTi(Alb固定)上での硬組織の形成をμCTと電子顕微鏡にて検証、解析する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ラット由来歯髄幹細胞(rDPSCs)を用いて以下の研究を行う予定である。 Alb固定を施したSA処理cpTi(純チタン(cpTi)表面上に陽極酸化・水熱処理を施して製作した傾斜機能型ナノハイブリッドチタン)表面上における新生骨形成を検証するための動物実験を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度の研究では、SA処理cpTiの実験試料表面上に固定したアルブミン(Alb)水溶液濃度を共同研究者と検証した結果、本研究計画に適した濃度であることが確認できた。これにより、in vivo実験時に実施する予定であった至適濃度が検証できたことから、その分の使用額については、翌年度に実施予定として計画しているSA処理cpTi(Alb固定)表面上におけるrDPSCsの骨芽細胞分化に関する動物実験のための実験実施に充てることが可能となり、さらに実験回数を増やすことが可能となった。したがって、翌年度への使用金額分は試料数と動物実験に使用する匹数、試薬に使用する予定であり、使用計画上は問題なく適切に執行していると考える。
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