研究実績の概要 |
令和4年度は令和3年度の研究計画に引き続き、歯肉癌由来がん関連線維芽細胞モデル(CAF-Ca9-22)と線維芽細胞(HGF)の相互作用について研究計画に従い、研究を行った。令和2・3年度と同様の共培養ディッシュを用いた共培養法で、CAF-Ca9-22とHGFを8時間と24時間共培養を行い、CAF-Ca9-22と、CAFと共培養後のHGF(HGF-CAF)のmRNAの発現を定量PCRで解析した。その結果、HGFと比較し、HGF-CAFではCOX-2,VEGF,MMP-1,9のmRNAの発現が上昇していた。この結果を踏まえ、CAFとHGFを24時間共培養し、cDNA microarrayを施行した。その結果、HGF-CAFではHGFと比較して以下の遺伝子発現に変化がみられた。35680遺伝子中、発現上昇上位10遺伝子としてCXCL8、LILRB1、MIR1302-6、MIR562、MIR4433A、LINC01284、CXCL3、CXCL5、LCE1A、MIR548Tが認められた。また、発現低下上位10遺伝子として、MIR548E、IGHD、MIR892A、MIR548C、OMD、MIR4797、CTSLP8、CTSLP8、LOC100505841、MAPK8IP1、APELAが認められた。以上のことから、歯肉癌の癌微小環境を構成するがん関連線維芽細胞に近接する正常歯肉線維芽細胞はCOX-2、VEGF、ケモカインの発現誘導が促されることが示唆された。本研究を通して得た結果から、口腔癌の顎骨へ浸潤機序において癌微小環境と歯肉をはじめとした歯周組織との相互作用が重要であると考えられた。本機序をさらに解明し、化学療法誘発口腔粘膜炎の顎骨露出機序を解明したいと考えている。
|