免疫チェックポイント阻害剤による治療耐性メカニズムの大きな要因は、①癌細胞において腫瘍抗原の免疫原性が低下し免疫応答が不活化する事や、②宿主側において腫瘍微小環境が免疫抑制状態になることである。一方、腫瘍溶解ウイルスは、腫瘍溶解により腫瘍抗原を放出し免疫応答を活性化すると同時に、炎症性サイトカインを惹起し免疫細胞を誘導するため、腫瘍免疫療法に対する耐性を解除する事に応用できると考えられる。 よって、今研究は、担癌マウス(SCC7/CH3マウス)において免疫チェックポイント阻害剤(抗CTLA-4、PD-1、PD-L1)に対し耐性を示すが、シンドビスウイルス(SIN)との併用療法にて耐性解除を行い治療効果が向上する腫瘍免疫療法の開発を目指す。 これまでに、腫瘍免疫の獲得を評価するために脾臓細胞内の免疫細胞(CD4、CD8、CD4+Foxp3+、CD8+Foxp3+、MDSC、B cell)を解析したが有意な比率の差が確認できなかった。そこで、今年度は、担癌マウスのモデルに抗PD-1抗体の投与(3 mg/kg、週2回、3週間計6回)とSINとの併用療法で脾臓細胞に加えて腫瘍内免疫細胞の解析も行った。しかし、腫瘍内の免疫細胞に有意な差は見られなかった。そこで、再度、脾臓細胞内で腫瘍抗原特異的な免疫細胞を獲得したかを確認するために、IFNγを検出するELISPOTアッセイを行った。抗PD-1抗体のみ、SINのみ、抗PD-1抗体とSINの併用の各群と未治療群で比較した際に、SINのみ、抗PD-1抗体とSIN併用治療の群ではIFNγを発現する細胞数が多かった。以上本研究では、抗PD-1抗体治療に耐性を示す腫瘍に対し、SINを併用すると治療効果があり、腫瘍特異的免疫細胞の獲得も認めたことから、腫瘍溶解ウイルスは免疫チェックポイント阻害剤の治療効果を向上させることが示唆された。
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