研究課題/領域番号 |
20K10099
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
杉村 光隆 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 教授 (90244954)
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研究分担者 |
大野 幸 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 講師 (00535693)
山形 和彰 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 助教 (40784195) [辞退]
山下 薫 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (50762613)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 概日リズム / 三叉神経系 / 痛覚日内変動 / Cry1/Cry2 / ノックアウトマウス / 時計遺伝子 / 時間医学 |
研究実績の概要 |
疾患の原因解明や治療戦略に体内時計機構に関する研究で得られた知見を応用する試みが始まっている.「痛み」の研究においても,痛覚の日内変動に言及した臨床報告が散見され,時間の概念を取り入れた上で診断と治療を行うことが重要である.そこで本研究では,これまでの「痛み」の研究に時間生物学的な視点を加え,より効果的な治療方法や制御方法を確立するための基礎的知見を提供することを目的としている. 10週齢の雄性マウスを室温23±1℃,12時間ごとの明・暗サイクル(明期:6-18時,暗期:18-6時)下で、食物及び水を自由に摂取させ少なくとも10日間飼育した.それらを実験ケージに入れ,30分間馴れさせた後,三叉神経の第二枝支配領域にホルマリン(5%,10μl)または生理食塩水(対照群)を皮下注射した.注射後,疼痛関連行動の持続時間を45分間評価した.その後,灌流固定を行い,免疫組織化学染色による標的タンパク質(c-Fos)の発現を観察した.実験は明期と暗期のそれぞれで行った.また上記同条件下で飼育した別のマウスから明期,暗期において三叉神経節を取り出し,ホルマリンの受容に関するTRPA1のmRNA発現について定量PCRを行い,発現量の違いを調べた.その結果、明期と暗期で比較したところ,疼痛関連行動の持続時間はホルマリン群において暗期の方が有意に長かった.またc-Fosの発現数も明期に比べて暗期で有意に多かった.さらに,三叉神経節におけるTRPA1のmRNA発現量は明期に比べて暗期で有意に多かった. これらの結果から,三叉神経支配領域の疼痛感受性には昼夜差があり,その原因として侵害受容に関わる受容体の発現量の差が関与していることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、Cry1/Cry2ダブルノックアウトマウスを用いて研究を行う予定であった。理論上は、Cry1/Cry2ダブルノックアウトマウス同士を交配させ、必要なマウスのラインを維持できるはずであったが、時計遺伝子を2種類ノックアウトしたマウス同士では繁殖がうまくいかず、どちらかのマウスをヘテロで交配させる必要があることがわかった。そのため、実験に必要なダブルノックアウトマウスの必要匹数を維持・確保することができず、まずは野生型マウスを用いて三叉神経支配領域における痛覚の日内変動を検討することに実験の方針を転換した。野生型のマウスにおける研究は順調に進み成果発表をすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
野生型のマウスを用いて、三叉神経支配領域における痛覚の感受性には昼夜差があることが示されたため、次は当初計画していたCry1/Cry2ダブルノックアウトマウスを用いた検討を行いたいと考えている。しかし、マウスを必要匹数確保するために効率の良い繁殖方法など検討を重ねる必要がある。 さらに、雌の野生型マウスを用いて、雄で行った実験と同様の実験を行い、痛覚日内変動における性差の検討も行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍にて、学術活動が概ねWeb開催になったことが大きい。引き続き、マウスの維持管理費や論文投稿費用などに使用する計画である。
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