研究実績の概要 |
IFN誘導性ケモカイン発現腫瘍組織おけるDPP4の免疫組織化学的検討:ケモカインの生物学的活性は, 組織で発現するケモカイン量や応答する細胞の受容体の発現だけでなく, ケモカインを分解する酵素の存在も関与している. このIFN誘導性ケモカインの抗腫瘍作用の違いが何に起因しているか明らかにするため, ケモカインのペプチド鎖を切断する酵素DPP4 の関与について, 免疫組織化学的検討を行った. HE染色により抗DPP4抗体を用いた免疫組織化学染色像の分析の結果、親株SCCVII細胞を含めて移植したすべての腫瘍組織周囲の皮下組織の線維芽細胞様細胞にDPP4陽性所見が認められた. このDPP4 陽性領域について定量解析を行ったところこれらの腫瘍組織間に統計学的有意差は認められなかった.一方, 腫瘍実質組織におけるDPP4の発現は, CXCL10発現腫瘍組織の線維芽細胞様細胞に陽性所見が認められた. この発現量の違いを定量解析したところ, Vectorと比較してCXCL10発現腫瘍組織では有意な発現上昇が認められた. 本研究で認められたCXCL10腫瘍実質組織おけるDPP4を発現している細胞がCAFsであるかは現在のところ不明であるが, 親株であるSCCVII由来腫瘍組織にはDPP4の発現が認められないことから, DPP4によって切断された短縮型CXCL10がCAFsの動員あるいは分化に関与している可能性は考えられる.本研究では, IFN誘導性ケモカインの抗腫瘍作用についてマウスモデルを用いて検討を行い, その抗腫瘍作用の違いは腫瘍組織におけるケモカイン切断酵素DPP4が関与している可能性を示した. 本研究で得られた知見は, DPP4を標的とした新たな免疫療法の奏功性改善の分子基盤の理解に貢献するものと考える.
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