研究成果の概要 |
IFN誘導性ケモカインCXCL9, CXCL10, CXCL11の安定発現細胞株の抗腫瘍作用は①CXCL9, CXCL11発現細胞は, 腫瘍増殖を抑制したが, CXCL10には抑制作用は認めない. ②CXCL9, CXCL11発現腫瘍組織は, NK1. 1の発現上昇とVEGFの発現低下が認めた. ③CXCL10発現腫瘍組織では, ケモカイン切断酵素DPP4の発現が認められた. この結果から,IFN誘導性ケモカインCXCL9, CXCL10, CXCL11の抗腫瘍作用には違いがあり,ケモカインを切断するDPP4の発現とその酵素に対するケモカインの感受性の違いに依存していることが示唆された.
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
IFN誘導性ケモカインCXCL10の腫瘍増殖能の要因を検討した.結果,CXCL10発現腫瘍組織は,ケモカインを切断する酵素DPP4の発現が多く認められた.これは DPP4によって切断された短縮型CXCL10が,癌関連線維芽細胞(CAFs)の動員あるいは分化に関与している可能性を考えた.現在癌治療に用いられる免疫チェックポイント阻害剤による免疫療法の有効性は, 腫瘍組織への細胞傷害性T細胞(CTL)の動員が必要であり, その動員にはIFN誘導性ケモカインが重要で,本研究で得られた知見は, DPP4を標的とした新たな免疫療法の奏功性改善の分子基盤の理解に貢献するものと考えている.
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