研究課題/領域番号 |
20K10113
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
片桐 渉 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (10437030)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 骨再生 / 幹細胞 / 培養液 / 培養上清 / サイトカイン / 液性因子 / マクロファージ / 抗炎症 |
研究実績の概要 |
今年度においては骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)由来培養上清(MSC-CM)のマクロファージ極性転換についての検討を行なった。まず細胞培養系の確立から着手しこれまでに行ってきたヒトMSCの培養、およびマクロファージの極性転換の検討のための単球性白血病細胞株であるTHP-1の培養を行った。MSC-CMをTHP-1培養時に添加し、あるいは既知のマクロファージ極性転換因子であるIL-17添加によるM1マクロファージからM2マクロファージへの極性転換をリアルタイムRT-PCRにて検討した。その結果、MSC-CMあるいはIL-17投与群ではM1マクロファージマーカーであるTNFα、CD86、iNOsの発現低下、M2マクロファージマーカーであるCD163、CD204、Arginase-1の発現亢進が確認された。 ついでWistarラットを用い、頭蓋骨に径5mmの欠損を作成、アテロコラーゲンスポンジにMSC-CMを含浸させ移植を行う動物実験を実施した。移植後72時間、1週、2週においてマイクロCTにて骨形成の評価を行い、また組織学的な検討を行なった。その結果、MSC-CM投与群では移植後1週より他群に比較して明らかに骨形成がマイクロCTにて確認できるようになり、移植後2週では欠損の多くを新生骨で占めるに至った。組織学的には移植後72時間において骨断端部周囲にCD105陽性の内在性幹細胞およびCD31陽性血管内皮細胞遊走、集積が確認され、移植後1週、2週と新生骨においては経時的に骨組織の成熟化が認められた。他方、移植後72時間の組織では骨断端へのマクロファージの集積も確認され、免疫組織学的にはCD204陽性M2マクロファージであることが確認され、MSC-CMによる骨再生の非常に早期の段階でM2マクロファージへの極性転換が行われていることを示唆する結果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MSC-CMのマクロファージ極性転換について動物実験を含め予想された結果を得ることができた。造血幹細胞(HSC)との共培養実験は未実施であるが、その前にある程度想定される実験系を確認し実施できたことで、次年度以降スムーズに実験を実施できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はまず造血幹細胞(HSC)の培養実験より着手する。次にMSCとの共培養実験にてMSC/HSC由来の培養上清を作成、この培養上清の特性をELISAやサイトカインアレイなどを用いて検討するとともに、引き続き細胞培養における遺伝子発現や移植実験における免疫染色などで共培養の効果、MSCのステムネス性の検討を行う。 また、移植実験においてはマイクロCTを用い、骨質、骨密度などの検討を実施する。
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