研究課題/領域番号 |
20K10116
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
吉田 充広 広島大学, 病院(歯), 講師 (40364153)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 慢性咀嚼筋痛 |
研究実績の概要 |
今年度は、アストロサイト活性化抑制剤(DL-フルオロクエン酸バリウム塩)投与による慢性痛の発症過程におけるアストロサイトの関与の探索を行った。DL-フルオロクエン酸バリウム塩は0.1625mg/mlに人工脊髄液で調整し、頚部髄腔内投与法で実験動物(雄性 Sprauge-Dawleyラット)に投与した。 頚部髄腔内投与法は、過去の報告を参考にし、短時間のイソフルラン麻酔下で背側部頚部の剃毛の後、頭部を体躯に対し90度になるよう保定し、触診で後頭結節と第一頚椎との間膜を確認して、マイクロシリンジに接続した27Gの注射針で、後頭頚部表皮より後頭頚椎間の間膜に穿針して行った。 当初、薬剤の投与量は10μLで行っていたが、実験動物の死亡や四肢の運動障害が高確率で起こったため、まず、適切な投与量の探索を行った。探索の結果、投与量は5μLが適切であることが分かった。また、投与間隔も最初は毎日の投与を設定ししていたが、この設定でも実験動物の死亡や四肢の運動障害が高確率で起こったため、適切な薬剤の投与間隔の探索も行った。探索の結果、投与は、1回目は、発痛物質(3%カラゲナン)投与当日に行い、その後は1週間おき(von Frey testの測定2時間前)に行うことが適切であることが判明した。 薬剤の投与方法、投与量、投与間隔の確定後、慢性痛の発症過程におけるアストロサイトの関与の探索を行った。アストロサイト活性化抑制剤投与をした実験動物では、カラゲナンの投与後約24時間までvon Frey testの閾値が低下したが、投与後約1週間で閾値の有意な低下はみられなくなった。この結果から、慢性咀嚼筋痛の発症には、急性痛期でのアストロサイト活性化抑制剤が関与を予測している。 今後は、アストロサイト活性化抑制剤の投与時期を変えることで、どの時期のアストロサイト活性化が慢性痛発症に関与しているかの探索を行う
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
アストロサイト活性化抑制剤(DL-フルオロクエン酸 バリウム塩)の頚髄投与の方法を確立するのに時間がかかった。また、研究途中で研究で使用しているVon Frey 電子痛覚測定装置 が故障し、修理を依頼したが、米国本社修理となったうえ、コロナ禍での製品輸送の遅れも重なり、修理に3か月を要した。
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今後の研究の推進方策 |
カラゲナン誘発性ラット慢性咀嚼筋痛モデルにアストロサイト活性化抑制剤(DL-フルオロクエン酸 バリウム塩)の頚髄投与の方法が確立したので、アストロサイト活性化抑制剤投与による、ラットの疼痛行動および咀嚼筋活動に起こる変化を比較検討を行う。また、マイクログリアの活性がカラゲナン投与による炎症の発症により起こることを確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大により、参加を予定していた学会が中止もしくは、web開催となったため、旅費の使用がなかった。また、実験器具の修理に3か月がかかり、研究を中断せざるおえなかった。 今年度は、アストロサイト活性化抑制剤や実験動物への薬剤投与に必要な器具の購入や学会参加費に使用する予定である。
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