研究課題
昨年までの研究結果から、慢性咀嚼筋痛の発症には、急性痛時の炎症メディエーター放出によるグリア細胞の活性化が起因となっていることが予測できたことから、抗炎症作用が小さい鎮痛薬の投与で慢性咀嚼筋痛の発症が抑制されるか否かを確認した。抗炎症作用が小さい鎮痛薬には、アセトアミノフェン(アセリオ静注液)を使用し、投与は短時間のイソフルラン麻酔下で発痛物質(3%カラゲナン)投与の同日に200mg/kgの腹腔内注射で行った。この結果、急性痛時に抗炎症作用が小さい鎮痛薬の投与を行っても慢性咀嚼筋痛の発症が抑制されないことが確認された。これまでに得られている、「抗炎症作用のある鎮痛薬(非ステロイド性消炎鎮痛剤:メタカム2%注射液)を急性痛時に投与すると慢性咀嚼筋痛の発症が抑制される」という知見と考え合わせると、慢性咀嚼筋痛の発症には、急性痛時の炎症メディエーター放出によるグリア細胞の活性化が起因となっていると考えられる。また、今後この仮説をさらに確実なものにするために、現在、抗炎症作用が小さい鎮痛薬(アセトアミノフェン)と抗炎症薬(ステロイド)を急性痛時に同時に投与した場合の慢性痛の発症状況がどうなるかを検討中である。これまでに得られた知見の一部は、2024年3月に米国で開催されたIADR/AADOCR/CADR General Sessionで発表した。また、2024年4月に大阪で開催されるOral Neuroscience 2023でも研究内容の紹介を予定している。
3: やや遅れている
コロナ感染が広まった年からの研究開始であったため、研究開始時期が遅れたうえに、研究に必要な薬品や消耗品が手に入りにくくなった時期があったこと。また、研究途中での電子痛覚測定装置の故障の修理に時間がかかったことの影響が継続している。このため、この度も研究期間の延長を申請した。
今後は、抗炎症作用が小さい鎮痛薬(アセトアミノフェン)と抗炎症薬(ステロイド)を急性痛時に同時に投与した場合の慢性痛の発症状況がどうなるかを検討をすすめ、さらに組織標本によるマイクログリアの活性化を確認することで、現在予想している仮説が正しいかどうかを確認する予定である。
コロナ禍の影響で、研究の進捗が遅れ、予定していた研究できなかったことや研究開始当初に予定していた学会参加できなかった。次年度は、グリア細胞の活性化を確認するための動物実験に必要な器具や薬品の購入、学会参加費、論文の作成等に使用する予定である。
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