研究課題/領域番号 |
20K10117
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
神田 拓 広島大学, 病院(歯), 助教 (00423369)
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研究分担者 |
山崎 佐知子 広島大学, 病院(歯), 病院助教 (00632001)
大林 史誠 広島大学, 病院(歯), 歯科診療医 (20806096)
濱田 充子 広島大学, 病院(歯), 助教 (30760318)
岡本 哲治 東亜大学, その他の研究科, 教授 (00169153)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Cowden症候群 / iPS細胞 / がん抑制遺伝子 |
研究実績の概要 |
全身諸臓器の多発性過誤腫と高率に悪性腫瘍を合併する疾患であるCowden(カウデン)症候群の原因遺伝子はがん抑制遺伝子PTEN(phosphatase and tensin homologue deleted on chromosome 10)であると報告されている。本研究では本学倫理規定(第ヒ-72号研究課題名:口腔顎顔面領域に病変を有する遺伝子疾患患者の遺伝子変異およびその遺伝子診断に関する研究)に基づき同意を得られたCowden症候群患者末梢血リンパ球(CS-PBMC)を採取し、PTEN遺伝子の新規変異を検索した。その結果PTEN遺伝子のヘテロ変異を認め,Codon 341 PhenylalanineのLeucineへ置換,codon 343 Valineのstop codonへの置換を確認した。同定された変異は現在まで報告されていない。また同変異によりPTEN蛋白はcodon342以降のC-末端側が欠損していると考えられた。次に無血清培地hESF9にてヒトES細胞の継代培養,ヒトiPS細胞における未分化性と多分化能を維持可能な無血清培養系にて、センダイウイルスベクターによるCowden疾患特異性iPS細胞誘導を樹立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画に基づき無血清培養系におけるCowden症候群疾患特異的iPS細胞(CS-iPS)を樹立した。Cowden症候群患者末梢血よりDNAを抽出し、PCR-SSCP法により、PTEN遺伝子の有無を検索したところ明らかなバンドやシフトの異常は認めなかったため次世代シークエンサーにより遺伝子変異の検討を行った。その結果、PTEN遺伝子エクソン8領域に3箇所の変異が明らかとなった。PTEN遺伝子は403のアミノ酸で構成されホスファターゼドメイン,C2ドメイン,C-TAIL,PDZ結合で構成されている。本遺伝子については多くの変異が報告されているが、その多くが酵素活性に関与するホスファターゼドメインである。今回われわれが確認したCowden症候群患者のPTEN遺伝子変異はC2ドメインに存在し、codon342以降のC-末端側が欠損しており,渉猟し得たかぎり新規の変異部位と考えられる。また乳がんに関連したBRCA2やHEXBの変異、あるいは消化管疾患に関連するとされるMLH1やMSH6などの変異も明らかとなり、当該患者の既往歴からも関連性が示唆された。CS-iPSについては未分化マーカーにて評価し、未分化マーカーの蛋白発現および遺伝子発現を各種未分化マーカーにて確認した。2020年度は新型コロナ感染症のため研究室の入室制限、PCRキットの入荷遅延、研究室の移転などがあり当初計画の開始がやや遅延した。
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今後の研究の推進方策 |
Cowden症候群疾患特異的iPS細胞(CS-iPS)を用いて、In vivo系では分化多能性および自己複製能を検討し、In vitro系においてteratoma形成の検討を行い、分化能の比較検討する。またインテグレーションフリー,フィーダーフリー,無血清培養系を用いてPTEN遺伝子の変異配列がもたらす細胞内シグナル変化、細胞増殖活性、アポトーシス抵抗性、セントロメアの不安定性、DNA修復異常、核内作用機序など機能解析、人工ヌクレアーゼを用いて変異遺伝子の正常化を行いゲノム編集にて発症メカニズムと新規治療法の開発を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年3月より発生した新型コロナ感染症による緊急事態宣言や大学全体の研究室での実験実施に関して人数や時間制限が定められため、当初の予定を開始することができなかった。また5月に研究室の移転も行われ中断期間となった。令和3年度は前年の実験計画に基づいて研究を継続して行う予定である。
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