研究課題
全身諸臓器の多発性過誤腫と高率に悪性腫瘍を合併する疾患であるCowden(カウデン)症候群の原因遺伝子はがん抑制遺伝子PTEN(phosphatase and tensin homologue deleted on chromosome 10)であると報告されている。本研究では本学倫理規定(第ヒ-72号研究課題名:口腔顎顔面領域に病変を有する遺伝子疾患患 者の遺伝子変異およびその遺伝子診断に関する研究)に基づき同意を得られたCowden症候群患者末梢血リンパ球(CS-PBMC)を採取し、PTEN遺伝子の新規変異を検索した。その結果PTEN遺伝子のヘテロ変異を認め,Codon 341 PhenylalanineのLeucineへ置換,codon 343 Valineのstop codonへの置換を確認した。同変異によりPTEN蛋白はcodon342以降のC-末端側が欠損していると考えられた。次に無血清培地hESF9にてヒトES細胞の継代 培養,ヒトiPS細胞における未分化性と多分化能を維持可能な無血清培養系にてセンダイウイルスベクターによるCowden疾患特異性iPS細胞誘導を樹立した。次世代シーケンサーにより,PTENのエクソン8における新規生殖細胞変異(c.1020delTおよびc.1026G > A)を検出した.サンガーシークエンスにより、変異型アレルからのPTEN転写物は確認されなかった。CS特異的人工多能性幹細胞(CS-iPSC)が、フィーダー・無血清培養下で患者のPBMCから樹立された。健康なPBMCやiPS細胞と比較して、CS由来のPBMCとCS-iPSCはいずれもPTEN転写産物の発現が有意に低下していた。転写バリアントであるPTENδはCS-iPSCで増加しており、これが疾患の原因である可能性が示唆され,論文投稿を行なった。健康なPBMCおよびiPSCと比較して、CS由来PBMCおよびCS-iPSCはいずれもPTEN転写産物の発現が有意に低下していた。健常人由来のサンプルと比較すると、各種分化能や未分化性に関する性状は大きな差は認められなかった。マウス皮下に細胞注入し形成したテラトーマの解析を行ったが、Vivoでも差を認めなかった。
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