研究課題/領域番号 |
20K10123
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
小宮山 雄介 獨協医科大学, 医学部, 助教 (90586471)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 三次元培養 / 重曹扁平上皮 / SLPI |
研究実績の概要 |
Secretary leucocyte inhibitor (SLPI)は様々な細胞で発現を認めるタンパク質であり,好中球の分泌するタンパク質分解酵素に対する阻害因子として組織融解を防ぐ機能が知られている分子である.近年では細胞内への局在とシグナル伝達経路上での機能が確認されるようになり,in vitroにおいて癌細胞の振る舞いを変化させることから,浸潤・転移を制御する創薬ターゲットとなる可能性が考えられている.先行研究においてSLPI野生型口腔扁平上皮癌細胞(SLPI細胞)とSLPI欠損口腔扁平上皮癌細胞(ΔSLPI細胞)との間では欠損によりMAPK経路の変化が認められた.細胞遊走に関わる遺伝子発現の低下が起こり,Myoma-disk culture modelにおいてはΔSLPI細胞で浸潤が起こらないことが示された.さらに,SLPIが細胞接着因子の発現を変化させることで細胞の遊走能や接着能を制御していることが示されている.培養時に通常の培養条 件下であってもSLPI細胞とΔSLPI細胞の間には細胞形態の差があり,これは先行研究では使用されなかった培養条件でも同様の傾向が観察された.昨年度はコラーゲンゲル中にマウス由来のNIH3T3細胞を包埋して擬似的な粘膜下組織を作製し,粘膜上皮としてSLPI細胞とΔSLPI細胞の重層を試みており,ある程度の重層化を観察できるようになった.しかし,物理的な問題点として,重層化させた細胞が収縮したコラーゲンゲルの側面に向かって慎重しており,浸潤の傾向が真であるか判定が困難となってしまった. SLPIの機能解析のための端緒を得る目的でFLAGタグ付与SLPIの発現ベクターの作製を行なっている.現在発現の確認実験を進めており,確認次第,相互作用分子を探索することになる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
COVID-19感染拡大に伴い必要とする研究資材の入手困難が続いている.とくにプラスチック製品の入手が困難となった時期があり,加えてヨーロッパでの社会情勢の変化の影響がこれに拍車をかけており,さらに遅れる要因となってしまっている.
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今後の研究の推進方策 |
現在,研究用資材の入手が再開しつつあり,研究を再開できる目処が立ちつつある状況であり,研究用消耗品が入手可能となったら直ちに再開したいと考えている. 三次元培養による浸潤がんのモデル作製については,平行して実施しつつ,浸潤能を評価する実験手法も行い,SLPI細胞とΔSLPI細胞の性質の違いについて検討を進めて行きたいと考えている.具体的には,Scratch assayやinvasion assayなどを行い細胞の性質について検証したいと考えている. 一方でFLAGタグを付加したSLPIによる標的分子の網羅的探索について,発現ベクターの作製を進めており,ベクターの設計を終えて組換え実験を行っている.次年度はこのベクターを使用して強制発現系での細胞内相互作用分子の同定を試みる予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
社会情勢の変化に伴い研究用資材の物流が変化し,入手困難となってしまった資材があり,研究遂行の妨げとなってしまっている.そのため,次年度使用額が生じている. 三次元培養による浸潤がんのモデル作製については,平行して実施しつつ,異なる方法での浸潤能を評価する実験手法も行い,SLPI細胞とΔSLPI細胞の性質の違いについて検討を進める.Scratch assayやinvasion assayなどを行い細胞の性質について検証する. 一方でFLAGタグを付加したSLPIによる標的分子の網羅的探索について,発現ベクターの作製を進めており,次年度は強制発現系での細胞内相互作用分子の探索を進める計画である.
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