研究課題/領域番号 |
20K10128
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研究機関 | 朝日大学 |
研究代表者 |
近藤 信夫 朝日大学, 歯学部, 教授 (40202072)
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研究分担者 |
村松 泰徳 朝日大学, 歯学部, 教授 (30247556)
住友 伸一郎 朝日大学, 歯学部, 教授 (50216496)
光藤 健司 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (70303641)
川木 晴美 朝日大学, 歯学部, 准教授 (70513670)
高山 英次 朝日大学, 歯学部, 准教授 (70533446)
神谷 真子 朝日大学, 経営学部, 准教授 (80181907)
梅村 直己 朝日大学, 歯学部, 講師 (80609107)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 口腔扁平上皮癌 / 間葉系間質細胞 / 骨髄由来免疫細胞 / 腫瘍微小環境 / 腫瘍免疫学 / ブラジル産プロポリス |
研究実績の概要 |
マウス口腔扁平上皮癌細胞Sq-1979により分泌されるIL-1αの示す間葉系細胞を介した免疫抑制作用に対して、免疫調節機能を有するブラジル産プロポリス(BP)がどのような作用を及ぼすか検討した。そのために先ず、BPをエタノール抽出し作製した希釈培地を用いて、間葉系 (10T1/2)細胞の免疫抑制作用の変化を検討した。その結果、Sq-1979細胞の馴化培地を含まない10% FBS増殖培地に16000倍、32000倍および64000倍希釈したBPを添加すると、BPの添加量に応じて、10T1/2細胞非存在下における抗CD3抗体刺激脾細胞のIFN-γ産生に比べて、10T1/2細胞存在下におけるその産生は60%にまで抑制されたが、BP希釈液を添加するとその抑制が緩和され、16000倍希釈液添加では80%にまで上昇した。即ち、BPは10T1/2細胞のような間葉細胞の免疫抑制作用を減弱することが示された。一方、Sq-1979細胞の馴化培地(CM)をあらかじめ抗CD3抗体刺激脾細胞と10T1/2細胞の混合培地に添加すると、抗CD3抗体刺激脾細胞のIFN-γ産生は40%にまで抑制され、その抑制作用はさらにBPを添加しその量を増しても変化しなかった。従って、BPに含まれる成分は、10T1/2細胞の免疫抑制作用を抑制(緩和)することが示されたが、Sq-1979細胞存在下では、おそらくSq-1979細胞のCMに含まれるIL-1αがその作用を打ち消し、さらに強力に10T1/2に代表される間葉系細胞の持つ免疫抑制作用を増強することが示された。一方、Sq-1979細胞のIL-1α産生に対するBP の作用をmRNA発現レベルで検討すると、低濃度において2倍程度までの発現量の上昇が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
BPは、がん細胞に対する増殖抑制作用が報告されているが、口腔扁平上皮癌による制御にどのような影響を与えるかはわかっていない。そこで、先ずBPが、がん間質細胞の間葉系細胞にどのような影響を与えるか検討した。さらに、間葉系細胞の免疫制御を促進するIL-1αとの相互作用を検討し、いくつかの知見を得ている。異なる細胞種を用いる実験系であることや、またBP自体も複数の因子を含有するため、それらの機構や関連物質を解析するためには、プロポリス成分や細胞種を絞り込んだ、単純な系を用いることが必要と考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は先ず、BPが脾細胞などの正常な全身免疫システムを介してどのような作用を発揮するのかを脾細胞の産生するサイトカイン等に注目して検討し、その主要な機能に対して推測および関連する免疫細胞を特定する。また、重要な機能を持つBP成分を特定し、個々の作用を比較することが必要と考えている。それら個々の成分を用いて、腫瘍微小環境を構成する様々な細胞成分に対する影響を詳細に検討し、有効な作用成分の絞り込みや機構を同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は、コロナ感染症蔓延のためほとんどの学会はWeb 開催となり、学会経費のうち特に旅費の支出が圧縮したため繰越金が発生した。次年度において、より活発化に活動を行うための資金として計上する予定である。
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