研究課題/領域番号 |
20K10129
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研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
平木 昭光 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 教授 (60404034)
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研究分担者 |
吉本 尚平 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 講師 (70780188)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 唾液腺 / 再生 / 分化 |
研究実績の概要 |
本研究では成体マウスの唾液腺から形態や機能を獲得できる分化誘導が可能な幹細胞を樹立し、これを幹細胞のソースとして唾液腺の器官再生法の確立を目指している。さらに、その再生器官の移植による生体の唾液腺再生法の構築を目的としている。 唾液腺幹細胞の分離・培養と細胞特性の解析:【唾液腺幹細胞の分離】8週齢のC57BL/6Jマウスから顎下腺を摘出した後に細切した。抗菌薬入り生理食塩水で洗浄し、プラスチックディッシュ上に付着させた後に低Ca(0.2mM)無血清 MCDB153/DMEM培地を加えて培養し、唾液腺幹細胞を分離した。【細胞特性の解析】この細胞の起源や特性を明らかにするために以下の実験を行った。唾液腺関連マーカーの発現(免疫染色):すべての細胞においてPan-CKとE-cadherinが陽性を示し、上皮細胞であることが確認できた。また、導管細胞のマーカーであるCK-18、CK-19は陽性で、腺房細胞のマーカーであるAQ5とAmylaseはほとんど染色性を示さなかった。筋上皮細胞のマーカーであるα-SMAは陰性であった。また、ほぼすべての細胞においてKi-67の弱い染色性を示した。次に、培地のCa濃度を0.2mMから1mMに上昇させると、個々の細胞は大きくなり、やや長細くなった後に直線上に配列し、腺管様配列を形成した。その細胞はCK-18、 CK-19、α-SMAの発現に変化はなかったが、AQ5とAmylaseの発現が上昇した。また、すべての細胞においてKi-67は発現しなかった。 このことより、マウス顎下腺から分離培養した細胞は唾液腺の導管上皮細胞の性格を持ち、未分化なものであることが示唆された。Ca濃度を上昇させることにより、形態的に唾液腺用の配列を示し、AQ5とAmylaseの発現が見られるなど唾液腺固有の機能が確認され、唾液腺幹細胞の性質を持ち得る可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度の研究実施計画は予定通り遂行中である。現在のところ、予期せぬ事で計画通りに進まないことはないが、そのような場合でも当初から予定しているように、唾液腺原基からの幹細胞分離・採取を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
唾液腺幹細胞の分離・培養と細胞特性の追加解析: 幹細胞の関連マーカーであるc-kit, Sca1, Sox2の発現を確認する。また、sphere形成能の検証として、スフィアアッセイおよび非接着環境下(マトリゲル)でEGF, bFGF刺激を行い、幹細胞の特徴であるsphere形成を確認する予定である。 唾液腺幹細胞の2次元分化誘導: 高Ca濃度培地、細胞外基質(フィブロネクチン、ラミニン、IV型コラーゲン)、成長因子(FGF、 HGF,唾液腺周囲由来の線維芽細胞培養上清)を作用させ、以下の評価を行う。i) 形態学的評価(実験法:位相差顕微鏡、電子顕微鏡)a.腺様構造(分枝の数・長さ)の測定 b.腺房構造(分泌顆粒、ゴルジ装置)の確認、ii) 機能的評価(実験法:免疫染色、ウエスタンブロッティング、RT-PCR) アミラーゼ、AQ5発現。分化誘導に関連した因子を同定することで、3次元の器官再生の条件設定が可能となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)タンパクの検索に関する抗体等の納期が間に合わなかったため、次年度使用額が生じた。 (使用計画)今年度の研究計画において使用する予定である。
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