研究課題/領域番号 |
20K10133
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
黒嶋 雄志 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (00610669)
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研究分担者 |
東野 史裕 北海道大学, 歯学研究院, 准教授 (50301891)
北村 哲也 北海道大学, 医学研究院, 客員研究員 (00451451)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 口腔がん / RBP / mRNP granules / mRNA / Sam68 / 上皮間葉移行 |
研究実績の概要 |
転移能およびCDDP抵抗性関連RBPについて: 2020年度に実施した口腔扁平上皮癌OSCC手術標本における免疫組織化学的検討において、RBPのひとつSam68が原発腫瘍の進展や頸部リンパ節転移に関連していることを見出した。Sam68をノックダウンしたOSCC細胞株における遺伝子発現の変化をmRNA-seq法により解析し、有意な発現変動を示した150遺伝子を同定した。これらの遺伝子群においてGene ontology解析を行ったところ、発現変動遺伝子の多くが上皮間葉移行(EMT)に関与する生物学的プロセスにし集中していた。EMTは、上皮細胞が周囲との接着を失い、運動性の高い間葉性細胞の形質を獲得するプロセスであり、腫瘍の進展や転移に深く関与するとされている。実際に、Sam68をノックダウンしたOSCC細胞では、運動能が有意に低下していることが明らかとなった。また、mRNA-seq法により同定された発現変動遺伝子のうち、EMTと運動能に関与するVimentinが、Sam68により特異的に制御されていることを検証した。CDDP抵抗性関連RBPについては、前年度に行ったプロテオーム解析にて発現に統計学的有意差を認めたRBPを抽出したが、このなかから主要なRBPを選定した。さらにこのなかで、RNP granulesのPB(Processing Body)の構成タンパクとなっているRBPを選定した。
OSCCにおけるmRNP granulesの機能解析について:上記の進捗を優先したことで、OSCC細胞におけるRNP granules(ストレスに応じて細胞質内に形成されるmRNAとRBPで構成された顆粒構造物)の挙動解析が遅れている。現在、上記研究計画IでPBの構成タンパクを選定し得たため、これを目的タンパクに加え、PBの挙動を検証したいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
転移能関連RBPについては、おおむね順調である。転移能関連RBPを決定して機能解析を進め、標的となる分子も同定した。すでに臨床データにおける関連性も検証を終えている。OSCCの悪性形質におけるSam68の役割を明らかにした本研究の結果は新しい知見であり、現在論文を投稿中である。 CDDP抵抗性関連RBPでは、網羅的解析によって候補分子を抽出したのちに、PBの構成タンパクであるRBPを選定した。ただし、この機能解析はまだ途中であり、やや遅れている。 RNP granulesの挙動解析は、当初の計画よりも遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は複数の主要な検討項目を有するが、転移能関連RBPの機能解析が最も進んでいる。Sam68は上述した運動能のみならず、細胞増殖にも関与する可能性が示唆されており、この検証をすすめる計画である。 CDDP抵抗性関連RBPの機能解析とmRNP granulesのPBの挙動・機能解析を続ける予定である。 当初、最終年度には関連RBP抑制機能を付与したアデノウイルスベクターによるin vivoの検討を計画していた。しかしながら、上述のごとくCDDP抵抗性関連RBPとmRNP granulesの検討が残されているため、計画を修正し、in vitroでの検討を優先してすすめたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会参加に関連する費用を計上していたが、学会がWeb開催であったため不要となった。これらの余剰を消耗品類の購入(抗体、細胞培養関連試薬)に充当したが、それでも次年度使用額が生じた。これらは、次年度における消耗品類(抗体、細胞培養関連試薬)購入や論文作成関連費用に充当する計画である。
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