研究課題/領域番号 |
20K10135
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
加藤 広禄 金沢大学, 医学系, 准教授 (30444201)
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研究分担者 |
川尻 秀一 金沢大学, 医学系, 教授 (30291371)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | エクソソーム / フローサイトメトリー / インターフェロン-γ / PD-L1 / 線維芽細胞 |
研究実績の概要 |
フローサイトメトリーは、これまで一般的な細胞サイズの解析を行っており、従来通りの一般的な測定条件では100nm程度の大きさしかないエクソソーム の解析は困難であった。そこで今回、エクソソーム 1粒子を解析するため、フローサイトメトリーの測定条件の最適化を行い、シングルエクソソームを解析することに よって、微量に存在する疾患特異的なエクソソームの検出を試みた。2種類の蛍光タンパク質のGFPとBFPで標識したエクソソームを様々な比率でまぜて解析を行い、ダブルポジティブなEVがほとんどない事が確認でき、シングルエクソソームを検出することができたまた、そのシングルエクソソームの表面マーカーを特異的に染色できることを確認した。さらに、悪性黒色腫細胞を用い、インターフェロンーγで細胞を刺激することによりPD-L1の発現が増加することを確認した。以上の結果より、フローサイトメトリーの測定条件を検討し、一定の条件を満たせば、フローサイトメトリーにてシングルエクソソームの解析は可能であった。また、エクソソーム を抗体で染色し解析を行った結果、エクソソームを特異的に染色し、解析できることを確認した。エクソソーム表面の疾患特異的マーカーの検出は可能であったものの、マーカー陽性エクソソームの増加は限定的なものであった。 さらに、口腔扁平上皮癌患者から線維芽細胞を樹立することができた。そこで、口腔扁平上皮癌細胞をこの線維芽細胞の培養上清で培養することで、線維芽細胞が口腔扁平上皮癌細胞に与える影響を検討した。その結果、口腔扁平上皮癌細胞が紡錘体様に形態変化した。さらには、口腔扁平上皮癌細胞の増殖には影響を与えないが、浸潤や遊走には影響を与えることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回の研究で、フローサイトメトリーを用いて、細胞が放出するエクソソーム1粒子を解析することが可能となった。これにより、これまで正常細胞から放出されているエクソソームと腫瘍細胞が放出しているエクソソームが混在した状態で測定していたが、より疾患特異的なエクソソームの検出が可能となった。 また、口腔扁平上皮癌患者から線維芽細胞を樹立できたことで、口腔扁平上皮癌細胞と線維芽細胞との間でのエクソソーム等を介した腫瘍進展への影響が確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、エクソソームの1粒子解析を応用し、口腔扁平上皮癌の癌細胞が放出するエクソソームの1粒子解析を行い、エクソソーム内に内包されているmRNAやmiRNAを解析することにより、疾患特異的な分子を特定していく。そして、その分子が癌細胞の進展にどの様に関わっているかを分析することにより、新規治療ターゲットとしての可能性や、非侵襲的ながん診断方法の確立につなげていきたいと考えている。 また、線維芽細胞から放出されるエクソソームを抽出し、そこの内包されている分子を検索し、口腔扁平上皮癌細胞の進展に影響を与える特定の分子を検索する。さらには、その分子の発現を調節することにより、口腔扁平上皮癌細胞の進展を制御しうるか検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
細胞培養ならびに細胞工学に用いる試薬等が入手困難な状況であり、培養細胞を用いた研究が制限されたため、次年度使用額が生じた。翌年度には細胞培養ならびに細胞工学研究に用いる試薬の入手が可能となる予定であり、本年度に滞った研究を遂行するため、この次年度使用額を含めた翌年度の助成金を使用する。
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