研究課題/領域番号 |
20K10139
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
小野 重弘 広島大学, 医系科学研究科(歯), 助教 (70379882)
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研究分担者 |
武知 正晃 広島大学, 医系科学研究科(歯), 准教授 (00304535)
飛梅 圭 広島大学, 医系科学研究科(歯), 准教授 (40350037)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 口腔扁平上皮癌 / EMT / 癌幹細胞 |
研究実績の概要 |
「臨床的に口腔癌の浸潤・転移を抑えることを目的とした基礎的研究」という口腔癌研究における基本理念の下,研究を行っており,その中でも口腔癌の浸潤・転移機構の本質の一つとして上皮間葉移行(epithelial-to-mesenchymal transition; EMT)に着目して研究を一貫して行っている.また最近ではEMTを獲得した一部の癌細胞で癌幹細胞様形質があることがさまざまな癌で報告されている.われわれが臨床の現場で診断・治療している口腔扁平上皮癌においてこのEMTと癌幹細胞様形質を関連づけて詳細に述べている報告はほとんどない. 口腔扁平上皮癌は頭頸部領域で最も発生率の高い癌であり,予後は極めて不良である.また,進行癌に対し治療に成功したとしても,審美性や摂食,構音といった機能面の障害が大きくなるため,口腔扁平上皮癌の細胞の浸潤・転移のメカニズムを解明し,それらを抑制する方法を基礎的研究から解明することは極めて重要であると考える.臨床病理組織学的にびまん性浸潤様式を呈し予後不良である浸潤様式Y-K分類の浸潤様式4D型の高度浸潤型扁平上皮癌から独自に高度浸潤型口腔扁平上皮癌細胞株を樹立した.その後,これら細胞の浸潤・転移能獲得における転写因子Snailが誘導するEMTに関してはこれまでに詳細に報告してきた.これまでに報告してきたSnail誘導型EMTにいかに癌幹細胞形質が関与するかを詳細に解明することを一つの目的としていて実験を行った.これまで,SnailがEMTを段階的に誘導する扁平上皮癌細胞株の作成とそれらが幹細胞特性を示すことを確認した.動物実験へ移行する準備段階が終了した段階であり,今後,標識タンパクであるGFPをフュージョンさせて,転移機構にあけるSnailに関与を解明する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予後不良である浸潤様式Y-K分類の浸潤様式4D型の高度浸潤型扁平上皮癌から独自に高度浸潤型口腔扁平上皮癌細胞株を樹立している.さらに上皮形質を強く残す口腔扁平上皮癌細胞株OM-1にEMT誘導因子であるSnailを強制発現させた細胞株OM-1_Snailを樹立した.さらにセレクションし,高度にEMT基質を持った細胞株OM-1_Snail cloneを樹立した.つまり,多段階EMT誘導細胞株を樹立した.一方で,癌の再発や転移には癌幹細胞が深く関与している可能性があることが近年報告されている.ほとんどの腫瘍組織が複数のクローンから構成されているといわれている.この事実は,それぞれのクローンを維持し,その拡大の源となっている細胞がそのクローン特有の癌幹細胞であることとそれぞれのクローンはゲノムレベルでは均一ではあるが,少数の癌幹細胞とそこから産生された非癌幹細胞から構成されるという点で癌の不均一性を示すことが考えられる.独自に樹立した高度浸潤型口腔扁平上皮癌細胞株を,不死化ヒト線維芽細胞株を用いたヒト口腔粘膜再構成三次元培養系を用いてin vitroではあるが実際の生体内の癌の浸潤様式に近い状態で再現した実験で多様な細胞形態を示した.また,これらをさまざまな幹細胞マーカー(CD44,CD133,ALDH1,SOX2, OCT4, Nanog)上皮細胞マーカー(ESA, E-cadherin, CD63等)で蛍光免疫染色したところ,不均一な分布を示した.このことから,口腔扁平上皮癌細胞は腫瘍組織内でクローンがそれぞれ多段階にEMT形質を獲得し存在していると考えられた.これまでに動物実験に移行するための細胞のプロトタイプは完成している.さらに,GFPをフュージョンさせることに若干手間取って,やや遅れているが本格的な実験に入る準備としてはおおむね順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
独自に樹立した口腔扁平上皮癌細胞株およびSnailを遺伝子導入して多段階的にEMT獲得した細胞株を用いて動物自然転移モデルを作成する.具体的には,細胞株にGFPを発現させ標識したSCC-GFP株(仮称)を作成する.さらにSCC-GFP株を用いて,ヌードマウスの舌および背部に様々な条件で腫瘍を接種させ,腫瘍形成させる.次に造腫瘍性の高い細胞を作成するために,最も腫瘍形成を示す条件で再度舌と背部に接種し形成された腫瘍を再度培養ディッシュ上で培養することを繰りかえすことにより,100%の腫瘍形成能を持った細胞株を樹立する.さらに培養を繰り返すことにより,リンパ節転移が必発するSCC-GFP細胞株を樹立する.この際,GFPで標識しているため,用意に転移部位を可視化することが可能である. リンパ節転移が必発するSCC-GFP細胞株における癌幹細胞の関与を解明する. 腫瘍形成細胞と転移必発型細胞を用いて,癌幹細胞表面マーカー(CD44,CD133,ALDH1)によるFACS解析を行い,細胞分画を行う.さらに,非接着性プレートを用いて,血清無添加培地に上皮細胞成長因子(EGF)および塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)のみを加えて,数週間培養してスフィアコロニーが形成されるかどうかを検討するスフィアアッセイを行う.加えて,癌幹細胞形質を確認するために,幹細胞マーカーであるSOX2, OCT4, Nanog mRNA発現を定量的PCR法にて確認を行う.
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