研究課題
本研究の目的は、口腔癌による頸部リンパ節の初期転移に対する診断精度の向上をはかることである。研究計画には1.頸部転移モデルの樹立、2.口腔癌頸部リンパ節転移の超音波イメージングによる臨床的評価、を含んでいる。1.頸部転移モデルの樹立:最終年度の研究成果として、ウサギに対して造腫瘍性を有する未分化扁平上皮癌細胞であるVx2-GFP癌細胞の樹立と増殖速度調整を行った。研究期間全体の成果としてはGFP遺伝子を持つレンチウィルスベクターを大腸菌にトランスフェクションさせて培養し、プラスミドを精製した。Vx2細胞を東北大学加齢研究所から購入し、プラスミドをVx2細胞にトランスフェクションさせてVx2-GFP癌細胞を樹立した。この細胞は培養条件に応じて増殖速度に隔たりがあり、転移モデル構築に至適の増殖速度を有する細胞株を選択することができた。2.頸部リンパ節転移の超音波イメージングによる臨床的評価:徳島大学病院歯科口腔外科を受診した口腔癌患者のうち、検査に同意した患者に対して、超音波画像検査を実施した。最終年度はこれまでのイメージングに加えて、微小血流に対して高い空間・時間分解能を有するB-flowも併用することができた。研究期間全体の成果としては、約250名(延べ数)を対象として、術前検査または経過観察目的の検査として、1名あたり30個程度の頸部リンパ節に対して超高分解能Bモードイメージング、SMI(Superb Microvascular Imaging)、B-flowを行った。このうち10名13個のリンパ節のリンパ節に初期転移を疑う所見として、リンパ節皮質内の高エコー 体の出現やSMIでの血流欠損、B-flowでの血流の偏在が観察され、初期転移の所見が示された。頸部郭清もしくはWait & Seeにより、初期転移を疑う所見の正診性の向上をはかることができた。