放射線性顎骨壊死(ORNJ)モデルの作成を行った。種々の量のガンマ線を照射したところ、12Gy以下では全例生存し、15Gy以上ではほぼ全て、18Gy以上では全て死滅することが明らかとなった。上顎骨は海面骨が少なく、腐骨分離を評価するには不向きであると考え、下顎にフォーカスした。照射領域の歯を露髄させることによりORNJ発症を促し、マイクロCT上で骨梁に変化があるように見られた。また、ガンマ線12Gy照射後骨シンチの撮影を行ったところ、16週では露髄処置を行った左側下顎臼歯部で集積が抜けたような像が確認されたものの、腐骨の有無に関しては組織学的にも評価困難であった。そのため、照射方法を10Gyx2回(合計20Gy)、5Gyx6回(合計30Gy)に変更しORNJモデルの策定を試みたところ、少量ではあるが、顎骨内に骨細胞の存在しないlacunaの存在が確認された。 マウスから採取した細胞を特定の条件で培養することによって得られる細胞群(高機能細胞治療薬:E-MNC)が放射線性顎下腺障害マウスの 唾液分泌量を増加させることを見出してきた。放射線性顎下腺障害の改善にはTh2優位になることが好ましいと考えたが、ORNJの場合には、感染した骨組織を積極的に排除させるために、Th1優位の細胞群にシフトした方が良いと考えられる。M1マクロファージ(CD11b+/CD206-)は、培養前では14.1%で、培養後では7.7%であった。M2マクロファージ(CD11b+/CD206+)は、培養前では1.1% で、培養後では5.1%であった。M1/M2の比率は、培養前で13.1、培養後では1.6であった。本細胞群を上記で示したORNJモデルマウスの尾静脈から注入したものの、組織学的に特記すべき所見は認められなかった。今後、細胞数など様々な条件を変えての施行を考えている。
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