研究課題/領域番号 |
20K10157
|
研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
今上 修一 富山大学, 学術研究部医学系, 助教 (80456392)
|
研究分担者 |
野口 誠 富山大学, 学術研究部医学系, 教授 (50208328)
冨原 圭 新潟大学, 医歯学系, 教授 (70404738)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 口腔癌 / 免疫チェックポイント阻害 / 好中球 |
研究実績の概要 |
本研究は、免疫チェックポイント阻害薬の抗腫瘍効果を最大限に発揮するための新規治療法の開発を目的とし、免疫チェックポイント阻害薬に対する抵抗性の機序の一端を、口腔癌宿主免疫応答における免疫逃避機構の解析により明らかとしようとした基礎的な研究である。免疫チェックポイント阻害薬の一つであるニボルマブは、2017年より切除不能・再発口腔癌に対しての使用が可能となった。口腔癌を含む頭頸部癌に対する免疫チェックポイント阻害薬の効果は、これまでの報告では20~30%程度と未だ限定的であり、これらの薬剤に対する効果予測を可能とする予知因子の同定が重要とされている。 本研究において検討を予定した指標は好中球/リンパ球数比(NLR)である。これは、様々な癌腫において、その予後や化学療法、放射線療法などに対する治療効果、また最近では免疫チェックポント阻害薬に対する反応性との関連性が報告されている指標であり、担癌宿主で増加する好中球の中にある免疫抑制性の細胞が、癌の治療に対する抵抗性に極めて重要な役割を果たしていることが示唆しているものである。本研究では、すでに進行口腔癌に対して免疫チェックポイント阻害薬による治療が行われ、奏効例と非奏効例において、このNLRが効果を予測する因子である可能性を証明してきた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、すでにシンジェニックのマウス口腔癌モデルを用いた解析によって、担癌宿主における免疫抑制性細胞である骨髄由来抑制性細胞(Myeloid derived suppressor cell:以下MDSC)が、腫瘍局所のみならず様々な臓器で増加し、担癌宿主における抗腫瘍免疫応答の抑制に強く影響していることが明らかとしてきた。本研究では、さらに、口腔癌マウスの腫瘍組織で集簇するCD11b、Gr-1陽性細胞が、免疫チェックポイント分子の一つであるPD-L1の発現増強により、T細胞に対する強い免疫抑制を誘導するが、一方で脾臓内におけるCD11b、Gr-1陽性細胞は、T細胞の増殖を促進する働きを有することを明らかとした。すなわち、この骨髄由来の細胞集団は、口腔癌担癌宿主において極めて多様性のある細胞であり、その標的化は、効果的な抗腫瘍免疫応答の誘導の可能性を示していることからも、担癌宿主で増加する末梢血中の好中球による免疫抑制との関連性を強く示唆する結果である。このCD11b、Gr-1陽性細胞を効果的に標的化することが治療実験における検討事項でもあり、これまでの研究結果は、次年度以降のさらなる解析への有力なデータとなっている。
|
今後の研究の推進方策 |
口腔癌マウスモデルを用いたCD11b、Gr-1陽性細胞の標的化治療を検討する。これまで、化学療法剤であるゲムシタビン、ドセタキセル、5FUなどは、MDSCに対する直接的な標的化が報告されている。また、申請者らのこれまでの先行研究でも、口腔癌担癌マウスにゲムシタビンが、宿主のCD11b、Gr-1陽性細胞の割合が減少することが確認している。そこで、口腔癌担癌マウスに上記の各種薬剤や抗体を投与し、その効果を検証する。 NR-S1K担癌マウスに各種薬剤を投与し、腫瘍組織、脾臓、リンパ節、末梢血におけるCD11b、Gr-1陽性細胞についてコントロールと比較検証する。具体的には、CD80、CD86、CD40、CD54、MHC分子などの表面抗原の発現解析。ROS、NO、Arginase I、VEGF、MMP9、S100Aなどの発現レベルの解析。担癌マウスの各種臓器よりMDSCをソーティングで分離し、 in vitroによる機能解析によって、免疫抑制機能について評価。各組織における免疫細胞の出現頻度を解析を行い、上記の解析で最も有効な治療薬を同定し、さらに免疫チェックポイント阻害薬である抗PD-1抗体との併用効果について検証実験を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス流行のため、いくつか予定していた学会へ参加できず繰越金が生じた。繰越金については、令和4年度に開催される学会への参加および、得られた成果を学術誌へ投稿する際の投稿費等へ割り当てる予定である。
|