研究課題
がん化学療法中や周術期には,口腔細菌等が関連する合併症発症を予防する事を目的とし,治療開始前からの口腔管理が推奨されている.発熱性好中球減少症は化学療法中合併症の1つであるが,その原因として口腔細菌が関連していることを示す報告は現在までにない.申請者らは当院で化学療法を行う患者に対し,発熱性好中球減少症の発症と口腔環境について解析している.発熱性好中球減少症など細菌が原因となる合併症発症リスクが高い化学療法患者を中心に,唾液・プラーク・舌苔および便を採取した.さらに、歯科初診時に,通法の口腔検査や申請者らが開発した口腔感染源評価を行った.要加療歯の治療や口腔衛生管理を継続しながら,評価を継続した。これらの臨床的な口腔評価と合併症リスクに関連する項目 (年齢,性,全身疾患の既往,喫煙,アルコールなどの嗜好品など),化学療法前からの全身状態 (血液検査など),治療方法 (化学療法種類,投与量・期間など) とを統計解析し、発熱性好中球減少症をはじめとした合併症発症や増悪に関係する口腔のリスク因子を統計解析した.解析結果では、発熱性好中球減少症発症群では,歯周炎の評価指標であるPISA:Periodontal inflamed surface area が非発症群と比較して有意に高値で,う蝕経験値や,治療前後の口腔細菌数に両群の違いは認めなかった.口腔の感染源の多さと歯周病重症度が,化学療法中合併症の1つである発熱性好中球減少症と関係するという結果を得た.これらの結果は2022年にScientific Reportsに報告した.H. Nishi et al, Sci Rep. 2022 Feb 15;12(1):2483.
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Scientific Reports
巻: 12 ページ: 2483
10.1038/s41598-022-06485-0. PMID: 35169215; PMCID: PMC8847642.