研究課題
エクソソームは細胞外小胞の1つであり、細胞間情報伝達システムとして注目されている。唾液中エクソソームは口腔内のみならず消化器の上皮細胞を通して全身に情報を伝達している。さらには個体間の情報伝達も可能である。本研究では新規ドラッグデリバリーシステム構築の足がかりとするため唾液エクソソームに着目して、その組成から細胞間物質輸送システムを考察・解明することを目的とした。しかしながら、唾液には多くのタンパク質が存在しており、約100 nmの粒径であるエクソソームを単離して内包されているタンパク質を解析するには困難な状況であった。令和4年度は本研究課題の最終年であるため、その精製法・機能・役割について検討した。精製法では、超遠心分離機およびゲル濾過カラムを用いて唾液エクソソームを精製し、これまでの調製法より精製度の高いエクソソームを分離することに成功した。唾液エクソソーム精製には、ペレットダウン超遠心法(PDUC)の後、ゲル濾過カラムに付し、フラクションコレクターを用いて分画してエクソソーム画分(qEVエクソソーム)を得た。全唾液・PDUCエクソソーム・qEVエクソソームをLC-MS/MSショットガン解析して含有するタンパク質を比較検討した。これによりエクソソーム外の唾液タンパク質をかなり除去することができ、安定的なエクソソームの調製が行え、これまで検出できなかったRabをはじめとする細胞融合に関連するタンパク質を確認することができた。また、舌がん由来細胞株(SAS細胞)が放出するエクソソームとの比較も行った。SAS細胞の培養上清(SAS)よりPDUC法によりエクソソームを調製した。エクソソームマーカータンパク質のウエスタンブロッティングによりエクソソームを確認した。SASおよび唾液エクソソームのタンパク質発現において相違を確認できたことより、臨床検査検体としての可能性が示唆された。
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日本口腔保健学雑誌
巻: 12 ページ: 16~22
10.32303/jnohs.12.1_16