研究課題/領域番号 |
20K10179
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
太田 耕司 広島大学, 医系科学研究科(歯), 教授 (20335681)
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研究分担者 |
武知 正晃 独立行政法人国立病院機構(呉医療センター臨床研究部), その他部局等, 医師 (00304535)
西 裕美 広島大学, 病院(歯), 助教 (70403558)
重石 英生 広島大学, 医系科学研究科(歯), 講師 (90397943)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Candida albicans / beta-glucan / CEACAM1 / 口腔粘膜上皮細胞 |
研究実績の概要 |
口腔カンジダ症は,Candida albicans (以下Ca)を主な原因菌とする日和見感染症である。Caの侵入に対して口腔粘膜はCaを認識し,宿主防御応答を稼働すると考えている。しかしながら,口腔粘膜上皮における beta-glucanのようなCa 構成成分を認識する明らかな受容体の存在やその機能については国内外において報告されていない。一方,Carcinoembryonic antigen-related adhesion molecules (CEACAM) はCEAファミリーのサブグループで,数種類の遺伝子の存在が報告されている。特にCEACAM1は免疫細胞や上皮細胞に発現し,悪性腫瘍のバイオマーカー,細菌との結合,難治性腸粘膜疾患の免疫応答の調節に関連することが報告されている。本研究は口腔粘膜細胞におけるCa細胞壁構成成分 beta-glucanを認識し,初期免疫応答に起因するCEACAM受容体の新規機能を解明し,誘導される免疫応答機構を明らかにすることを目的とする。今回の研究において口腔粘膜上皮細胞RT7にCa生菌,加熱死菌,Ca bete-glucan を添加することでCEACAM1mRNA, 蛋白の発現誘導が増加することが示された。またCEACAM1をsiRNA, 中和抗体によってノックダウンすることによってCa beta-glucanや酵母beta-glucanで誘導されるストレス応答因子Heme oxygenase-1 (HO-1)の誘導がコントロールSiRNA導入株と比較して減少することが認められた。またCEACAM1の中和抗体によってもCa beta-glucanで誘導されるHO-1 の発現誘導が抑制された。今回の結果からCEACAM1がCa 細胞壁成分beta-glucan で誘導される免疫応答に重要な機能を持っていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回の研究において口腔粘膜上皮細胞RT7にCa生菌,加熱死菌,Ca beta-glucan を添加することでCEACAM1の発現誘導が増加することが示された。またsiRNA や中和抗体によるCEACAM1の抑制によってCa beta-glucanで誘導されるHO-1の誘導が減少することが認められた。今回の結果からCEACAM1がCa 細胞壁成分 beta-glucanで誘導される免疫応答に重要な機能を持っていることが明らかになった。またBinding assayによってリコンビナントCEACAM1蛋白がCa beta-glucanと結合するが認められた。これらの結果は口腔粘膜上皮細胞が発現しているCEACAM1がCa beta-glucanと結合し,免疫応答を稼働している可能性を示している。このため概ね研究計画は進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後はさらにBinding assay を行い, CEACAM蛋白とCa beta-glucanとの結合を検討する。RT7, GT1のタンパク抽出画分とCa beta-glucanを結合させたビーズを用いた免疫沈降後,CEACAM抗体によるWestern blotting を行い,beta-glucanとCEACAMの親和性を検討する。またCEACAM,beta-glucanの蛍光抗体を用いた蛍光免疫染色によってCEACAMとbeta-glucanの細胞内における結合,共局在を検討する。その後、中和抗体によってCEACAM の発現が抑制された株やCEACAM過剰発現株とコントロール株におけるCa beta-glucan添加で誘導される遺伝子発現の比較をマイクロアレイによって網羅的に解析し,CEACAMを介して誘導,抑制される遺伝子群を抽出する。その後免疫応答経路のパスウエイ解析を行う。またそれらの経路の転写阻害剤を用いてCa beta-glucanで誘導される炎症応答の影響を検討し,キー蛋白を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今回、購入した物品の中で細胞培養培地の購入金額が予想より下回ったため、繰り越し金額が発生した。次年度は細胞培養培地にその金額をあてて購入する予定である。
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