研究課題/領域番号 |
20K10185
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
吉岡 泉 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (10305823)
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研究分担者 |
松原 琢磨 九州歯科大学, 歯学部, 准教授 (00423137)
矢田 直美 九州歯科大学, 歯学部, 准教授 (60468022)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 悪性黒色腫 / Plectin / 接着 / 移動 / 増殖 |
研究実績の概要 |
悪性黒色腫はメラノサイトから発生する悪性度が高い悪性腫瘍である。口腔粘膜に発生する悪性黒色腫は皮膚のものと比べて予後不良とされるが、発生頻度が低く顎骨への浸潤などは検討されていない。がん原遺伝子チロシンプロテインキナーゼSrc(Src)はさまざまな悪性腫瘍で活性化するため、Srcの活性化に不可欠な因子として同定したPlectinが悪性黒色腫の発症や進展にも関与するのではないかと考えた。そこで、データベース解析を行ったところ、ヒトの健常皮膚→良性母斑→悪性黒色腫への変化に伴いPlectinの発現が上昇することが明らかとなった。さらに、マウス悪性黒色腫B16細胞のPlectinをCRISPR-Cas9を用いてノックアウトすると、細胞の増殖および遊走能が低下した。以上より、本研究では悪性黒色腫の増殖・浸潤(特に顎骨浸潤)、さらに肺転移におけるPlectinの役割を明らかにし、Plectinを標的とした悪性黒色腫治療法やplectinの発現を指標とした診断・治療選択法確立のための分子基盤形成を目的とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスMM細胞株B16細胞にCRISPR/Cas9を導入しPlectin遺伝子欠損細胞(PKO)を作製した。PKOの細胞増殖をWST8 assayおよびリアルタイムPCRで、細胞移動をScratch assayおよびTrans-well migration assayで検討した。フィブロネクチンをコーティングした培養皿に細胞播種し、2時間後に非接着細胞を洗い流すことにより細胞接着能を検討した(adhesion assay)。ヌードマウスにPKOを接種し2週間後に形成された腫瘍を形態学的・組織学的に解析した。スフェロイドを形態学的に評価した。Western blotting法でPKOにおけるリン酸化Srcの発現量を調べることでSrcの活性化を評価した。 Control群に比べてPKOは、WST8 assayで生存細胞数の減少と、mRNAレベルでのCyclinD1の発現量の低下を認めた。またPKOは、Scratch assayとTrans-well migration assayで細胞移動が減少した。さらにadhesion assayで、PKOは接着細胞数が減少した。摘出した腫瘍の形態学的解析の結果、PKOはcontrolと比べて大きさに有意差を認めなかったが、腫瘍密度はPKOで有意に小さかった。PKOのHE標本では細胞間隙の広がりを確認した。同様にPKOは、細胞間隙が広がった大きなスフェロイドを形成した。また、PKOにおけるリン酸化Srcの発現量の低下を認めた。そこで Srcを過剰発現させたところ、Src過剰発現PKOは、細胞接着能、スフェロイド形成能の回復を認めた。
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今後の研究の推進方策 |
遠隔転移(特に肺への転移)を観察していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験に遅れが生じたために購入をしなかった消耗品があったため。次年度の消耗品の購入に使用する予定である。
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