研究課題
BOSS/GPRC5Bという遺伝子は細胞外のエネルギー量を感知し、その情報を細胞内に伝達する機能を有することから糖尿病の研究で注目されている。着目すべきは、この遺伝子をノックアウトすると、①生体におけるエネルギーバランスは崩壊し、飢餓状態に陥りやすくなること、さらには、② 高栄養食を与えても貯蔵エネルギーを蓄えられず肥満にならないことが示されている。癌細胞は正常細胞と比較し、増殖するためには非常に多くのエネルギーを必要とする。また、環境の変化に応じて、取り込むエネルギー源は糖のみならず、アミノ酸など他の物質に依存することで増殖し続ける能力を有することも報告されている。そこで我々は、① エネルギーセンサーBOSS/GPRC5Bが、癌細胞においても必要とするエネルギー量を感知するのか、②エネルギー量を感知した場合、癌細胞に及ぼす影響は如何なるものかを証明することを目的とした。令和2年度の研究では、癌細胞の異常な糖の取り込みがBOSS/GPRC5Bの機能異常(欠損もしくは発現過剰)によって引き起こされるのかを検討するものであった。本研究を進めるうえで基礎となる部分で、一般的な細胞株や患者検体を使用し、これまで明らかにされていなかった癌細胞でのBOSS/GPRC5B発現量を確認するものだった。確認できる範囲の細胞株で均一的に発現しているわけでなく、一部で遺伝子発現の増加がみられるという結果を得ていた。令和3年度ではBOSS/GPRC5Bの発現が高い細胞にはBOSS/GPRC5Bに対するsh-RNA、低い細胞にはBOSS/GPRC5B強制発現ベクターを遺伝子導入し、糖代謝に対する機能解析を進めた。令和4年度は研究成果をまとめ、論文として報告した。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Biomedical Research
巻: 44 ページ: 1-7
10.2220/biomedres.44.1