研究課題
本研究は歯科で見落としてはいけない重要疾患を、人工知能の最新技術であるディープラーニングを多施設共同で利用することにより、95%を超えるような高い診断能を有する画像診断支援システムを構築することである。対象は歯周炎、顎骨腫瘍、顎関節症、骨粗鬆症、口腔癌、頸部リンパ節や口腔乾燥症等とする。口腔癌や頸部リンパ節のCT、超音波画像診断の根拠は病理組織学所見に基づく。シェーグレン症候群は診断基準に基づく。顎関節症のCT、MRI診断の根拠は臨床症状あるいは多観察者の診断に基づく。パノラマX線画像診断の根拠はCT、歯科用コーンビームCT、歯内顕微鏡検査あるいは臨床症状に基づく。本研究は歯学部倫理委員会の承認を得て研究に着手している。 ディープラーニングシステムの構築と解析は愛知学院大学、朝日大学、昭和大学および日本歯科大学において行う。汎用性の高いWindows OS、 NVIDIS GPU、Sony neural network consoleより構成されるPCを新規購入した。会議やネット会議で研究打合せを行う。本年度は、多施設共同研究で、CTにおける頸部リンパ節の自動検出、MRIにおける関節円板の領域分割、超音波像におけるシェーグレン症候群の診断、パノラマX線画像における顎骨嚢胞、上顎洞炎、顎裂、関節突起骨折、唾石等の検出・診断についての研究を行なった。2施設以上の画像を加えて学習させたり、あるいは転移学習を行ったりした。成果はシンポジウムや論文において発表を行った。
2: おおむね順調に進展している
研究は、当初の計画通りに順調に進み、学会誌へ投稿中、あるいは掲載に至っている。研究の成果発表は、研究代表者の転勤およびコロナ禍での出張制限により、出張があまりできていない。研究の打合せは、メールおよび郵便でおこなっている。
昨年度に引き続き、多施設共同研究を遂行していく予定である。パノラマX線画像における智歯と下顎管の領域分割、嚥下造影像における造影領域の分割について、多施設共同で研究を行ない、現在論文投稿中である。パノラマX線画像における顎嚢胞/腫瘍の検出・診断については、複数のニューラルネットワークを使ってどのモデルが最適かを検討中であり、研究成果をまとめ学会および論文に発表予定である。またMRIを用い対象疾患をひろげ、ディープラーニングモデルの作成を行い、その精度を検討する予定である。本研究を通して、歯科放射線専門医のいない施設や遠隔地における画像診断支援につながるものと期待される。また、研修医 や未熟練の歯科医師への教育効果も期待でき、がんの見落としを防止し、診断や治療方針立案の一助となるものと考えられる。
次年度使用額が生じた理由:研究代表者が年度途中で転勤になったこと、およびコロナ禍で海外出張、国内出張の自粛が求められ、研究打合せ旅費および研究の成果発表旅費が使用できなかった。次年度使用額と2022年度交付額をあわせた使用計画:データ解析のための物品購入、研究打合せ旅費、研究成果発表旅費、論文作成費用、画像のアノテーションのための研究補助
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (13件) (うち国際共著 4件、 査読あり 13件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (15件) (うち招待講演 4件)
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