研究課題/領域番号 |
20K10196
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研究機関 | 鶴見大学短期大学部 |
研究代表者 |
藤原 久子 鶴見大学短期大学部, 歯科衛生科, 教授 (80396746)
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研究分担者 |
熊谷 賢一 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (10518129)
川口 浩司 鶴見大学, 歯学部, 准教授 (50277951)
濱田 良樹 鶴見大学, 歯学部, 教授 (70247336)
大島 朋子 鶴見大学, 歯学部, 学内教授 (50233101)
伊藤 由美 鶴見大学, 歯学部附属病院, 講師 (00176372)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | PARP阻害剤 / 菌叢解析 / 化学療法誘発粘膜炎 / 腸管免疫応答 |
研究実績の概要 |
本研究では、抗腫瘍薬のシスプラチン(CDDP)と分子標的薬のPARP阻害剤をマウスへ投与した場合に全身へ及ぼす影響について、特に消化管粘膜(口腔・腸管)と菌叢(口腔内・腸内)へ及ぼす影響について検証している。 昨年度に行ったC57BL/6(6週令・メス)へのシスプラチンならびにPARP阻害剤のマウス腸管粘膜に対する影響の解析の結果、①CDDP群、②PARP阻害剤群、③CDDP・PARP阻害剤併用群、④コントロール群において、(1)コントロール群とPARP阻害剤投与群では、消化管粘膜に顕著な差異は認めない、(2)CDDP群の空腸と回腸ではコントロール群とPARP阻害剤群と比較して有意な空腸絨毛と回腸絨毛の短縮が認められる、(3)CDDP・PARP阻害剤併用群ではCDDP群と比較して絨毛の短縮は明らかではなく、コントロール群との有意な差は認められなかった、ことの3点が分かったため、2022年度は大腸の糞便から採取したDNAを用いて16sRNA解析をによる菌叢解析を行った。 その結果、薬剤投与終了後1か月目のマウスにおけるレベル4の菌叢解析では、Firmicutes_Clostridia_Clostridialesの割合がCDDP群とCDDP・PARP阻害剤併用群の2群において有意に増加、レベル5・6・7の解析においても、同様にFirmicutesの系譜であるBacteroides_caecimurisの有意な増加が認められた。一方、コントロール群とPARP阻害剤単独投与群においてはレベル7までの菌叢が近似しており、α解析・β解析ともに距離が比較的近く、PARP阻害剤単独投与では菌叢への影響が軽微であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度に新型コロナウイルス感染症拡大防止策に伴う緊急事態宣言、ならびにその後の学生教育のオンライン化に伴い、研究自体にエフォートを裂くことが困難であった影響は大きく、2021年度・2022年度とそれなりのエフォートを割けるようになったとはいえ、2020年度分の遅れを取り戻すことは中々難しかった。研究開始後の進捗状況は比較的順調ではあったものの、1年分の遅れを取り戻すには至らず、2023年度にまで1年間の研究期間の延長を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度まで1年間研究期間を延長したため、この1年間で菌叢解析と病理組織学的評価を進める予定にしている。菌叢解析については、専用のソフトの使い方の難易度が高かったが、薬剤投与終了後1か月目の解析が可能となったことより、3か月目・6か月目の解析についても可能となることが分かった。 病理組織学的解析については、免疫組織学的解析を進め、両者の結果を合わせた網羅的解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度の新型コロナウイルス感染症防止のために研究にエフォートを割くことが困難であった結果、そのまま研究計画が後ろ倒しになり、2023年度の1年間、研究期間を延長したため次年度使用額が生じた。 免疫組織学的解析に必要な試薬や抗体の購入、ならびに菌叢解析の追加を外注するために使用したいと考えている。
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