研究課題/領域番号 |
20K10199
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
松本 芳郎 東京医科歯科大学, 東京医科歯科大学病院, 講師 (20292980)
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研究分担者 |
青木 和広 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (40272603)
清水 康広 東京医科歯科大学, 歯学部, 非常勤講師 (60631968)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 根尖部歯根吸収 / 歯の移動 / セメント質形成 / 歯根吸収予防 / 歯根吸収修復 |
研究実績の概要 |
ラットの上顎臼歯の移動に伴う歯根尖吸収モデルにおいて、最小の歯根吸収で最大のセメント質形成・修復がおこなわれる矯正力の大きさ・作用期間・作用様式・分布・咬合干渉・歯根の形成段階等の条件の網羅的解析を継続した。対合歯や隣在歯咬合面のレジン築盛により、咬合干渉の付与や排除の状態も調整した。 一方、21日齢、28日齢並びに35日齢ラットの上顎の歯の移動に伴う歯根尖吸収モデルでの検討も行った。すなわち、上顎第一臼歯と第二臼歯の咬合面裂溝に3グラム重になるように調整したU字型ワイヤーを接着し、第一臼歯と第二臼歯相反的傾斜移動を、1/2, 1, 3, 5, 7日間行い、第一臼歯をマイクロフォーカスX線CT並びに組織学的に観察した。 その結果、歯根が形成中の21日齢ラットではほとんど根尖部歯根吸収が生じなかったが、35日齢ラットでは、近心頬側根において、根尖部に酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ染色陽性の破歯細胞が集積し、有意に根尖部歯根吸収が生じた。根尖歯根吸収部位の周囲歯根膜でスクレロスチンの発現が矯正力付与後5日目から対照群と比べ減少していた。矯正力付与後5日目に矯正用ワイヤーを撤去し、その9日後(矯正力付与開始後14日後)にアルカリホスファターゼ並びにオステオポンチンの発現を伴う歯根吸収窩の修復が認められた。 これまでの研究結果から、矯正力を撤去するか、根尖部歯根吸収を回避する一つの方法として、可能な場合は歯根形成中の歯を移動対象歯とできれば、根尖部の歯根吸収を回避できる可能性が示唆された。 2021年度はこの上顎臼歯の移動に伴う歯根尖吸収モデルにおける歯根吸収様相の結果を蓄積し、研究成果の発表のための準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は当初予期できなかったコロナ禍に伴う緊急事態宣言が複数回発令され、特に4月から6月にかけては、本学でも緊急事態宣言に伴う研究活動の制限に伴い、研究室や実験動物センターが使用できない状況となり、研究活動の遅延が生じた。その後2021年度も新型コロナウイルス感染症まん延防止等重点措置が発令され、研究活動の制限があったが、可能な範囲で研究活動を行った結果、現在はやや遅れた状況に留まっている。
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今後の研究の推進方策 |
これまで用いてきたラットの上顎臼歯の移動に伴う歯根尖吸収モデルにおいて、最小の歯根吸収で最大のセメント質形成・修復がおこなわれる矯正力の大きさ・作用期間・作用様式・分布・咬合干渉・歯根の形成段階等の条件の網羅的解析を継続する。 0, 1, 3, 5, 7, 14日後にマイクロフォーカスX線CT にて、歯の移動の状況の様相を評価する。また、3, 5, 7, 10, 14日後の脱灰組織標本にて、TRAP 並びにALP の酵素組織化学染色による破骨細胞/破歯細胞、セメント芽細胞の同定並びに活性の評価、RANKL、OPG、LIF、ベータカテニン、Wntシグナル関連因子等の免疫組織化学染色による分布同定、硬組織ラベリングした凍結切片または非脱灰研磨切片にて修復セメント質の定量的評価を行う。マイクロアレイ法により網羅的解析を行い、吸収の促進因子、抑制因子の候補遺伝子群に対して、RT-PCR法並びに免疫組織化学染色法等により根尖部歯根吸収並びにセメント質修復の分子細胞生物学的メカニズムを明らかにして、吸収を最小限にしつつ、修復機能も維持する対応策を検討する。 2022年度はこれら歯根吸収系・形成修復系の組織学的評価並びに定量的評価に関する結果を取り纏め、考察を行い、歯根尖吸収・修復モデルの網羅的解析並びに組織学的・定量的評価を加えて総合的な成果の発表を行う予定である。 コロナ禍で研究が遅延したことに対しては、できるだけ速やかに計画を進める一方、研究期間の延長承認も視野に入れて対応を検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年は当初予期できなかったコロナ禍に伴う緊急事態宣言が複数回発令され、特に4月から6月にかけては、本学でも緊急事態宣言に伴う研究活動の制限に伴い、研究室や実験動物センターが使用できない状況となったための研究活動の遅延、並びに発表予定であった学術大会がオンラインによるWeb開催となったことと合わせて2020年度に次年度使用額が生じた。その後2021年度も新型コロナウイルス感染症まん延防止等重点措置が発令され、研究活動の制限があり、2021年度にも次年度使用額が生じたが、可能な範囲で研究活動を行える状況が継続していることから、2021年度未使用分の使用計画を、2022年度実施・使用予定計画と合わせて行う予定である。
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