研究課題/領域番号 |
20K10206
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
寺尾 文恵 九州大学, 歯学研究院, 助教 (10510018)
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研究分担者 |
高橋 一郎 九州大学, 歯学研究院, 教授 (70241643)
春山 直人 九州大学, 歯学研究院, 准教授 (70359529)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 歯学 / 発生・分化 / ヒストンアセチル化 |
研究実績の概要 |
われわれは、これまで、胎生期における顎顔面のパターン形成制御機構の解明を試みてきた。顎顔面領域の発生におけるエピジェネティック制御機構に着目し、ヒストン脱アセチル化酵素(Histone deacetylase, HDAC)の阻害は、下顎隆起細胞の増殖、下顎隆起のパターン形成を乱すことを示した。 そこで、本研究では、HDACとは逆の働きを有するヒストンアセチル化酵素(Histone acetyltransferase, HAT)による顎顔面形態形成の制御機構を解明することにより、HAT/HDACによるアセチル化バランス制御を介した、顎顔面領域の形態制御メカニズムの解明を目指すこととした。 HATの一つとしてp300に注目し、p300選択的阻害剤であるC646を用いて実験を行い、昨年度は、マウス胎生期下顎隆起由来細胞の単層培養において、C646の添加により、下顎隆起由来細胞の細胞増殖が有意に低下することがわかった。 今年度は、単層培養ではなく、高密度培養におけるHAT阻害を行った。 マウス下顎隆起を摘出、細胞を分散、高密度で培養することにより軟骨分化を促進する条件化でC646を添加し、p300 の阻害を行った.ホールマウントアルシアンブルー染色を行い、軟骨ノジュール形成を観察したところ,C646の添加により軟骨ノジュールの形成が抑制された。このことから、胎生期下顎隆起由来細胞において、HATは間葉細胞の軟骨分化を制御していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度、新型コロナウイルス感染症に対する大学の行動指針により、研究活動に制限や実験に必要な消耗品に供給が不安定であったことによる影響により、昨年度行う予定であった実験を今年度行ったため。また、いつも使用している培地の国内・国外在庫がなく、納品に4か月以上かかっているため。
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今後の研究の推進方策 |
1)下顎隆起の器官培養におけるHAT阻害 - 改良型 Trowell 法により摘出した下顎隆起および第二鰓弓の器官培養を行う。C646添加後、経時的にタンパクを抽出し、HAT阻害剤によるヒストンH3のアセチル化の減少を確認する。また、C646の各濃度において、ホールマウントアルシアンブルー染色を行い、経時的な軟骨形成状態を観察する。さらに、培養器官を固定、パラフィン包埋後、連続切片を作製し、組織学的変化を検討する。 2)局所的HATノックダウン実験 - 摘出した下顎隆起および第二鰓弓にHAT siRNAをエレクトロポレーション法により導入し、器官培養を7日間継続する。siRNAをインジェクションする部位は、下顎隆起中央部、側方部の二領域に分ける。ホールマウントアルシアンブルー染色を行い、実体顕微鏡下で軟骨形成の状態を観察する。さらに、in situ hybridization 法を用いて、顎顔面の形態形成を時間的・空間的に制御していると考えられている遺伝子発現パターンの変化を経時的に検討する。 3)プロモーター活性の解析 - HAT siRNAによるノックダウンによって軟骨形成に影響があると予想されるため、HAT siRNAにより軟骨分化マーカーであるII型コラーゲンのプロモーター活性が変化するかどうかを確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
いつも使用している培地の国内・国外在庫がなく、納品に4か月以上かかっており、予定していた実験の実施が不可能であったため。
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