研究課題/領域番号 |
20K10209
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
吉田 教明 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 教授 (40230750)
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研究分担者 |
吉見 知子 長崎大学, 病院(歯学系), 医員 (20805973)
藤下 あゆみ 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (30755723)
古賀 義之 長崎大学, 病院(歯学系), 講師 (50175329)
森内 絵美 長崎大学, 病院(歯学系), 医員 (70866607)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 咀嚼 / 顎運動 / 筋電図 / モーションキャプチャー / 軟食化 |
研究実績の概要 |
高精度ハイスピードカメラを用いたモーションキャプチャーシステムと動物実験用3DマイクロX線CTを組み合わせ、顎運動データを頭蓋顔面形態データに関連付けることで、6自由度顎運動解析システムを構築し、咀嚼中のマウスの顎運動を視覚化するシステムを完成させた。次に、顎運動と同期した咀嚼筋筋活動を記録するシステムを開発した。本システムにより、咀嚼運動中の咬合接触の視覚化が可能となり、臼歯の運動軌跡に基づいて、上下顎臼歯の咬合接触開始から臼歯が離開するまでを咬合相として特定できた。その結果、咀嚼サイクルは、開口相、閉口相、咬合相に明確に分割できた。下顎頭の運動に関して、開口相では、両側の下顎頭が共に前方移動した後、作業側の下顎頭は開口相の途中で後方移動に転じたが、平衡側の下顎頭は開口相終了まで前方に移動した。これにより、下顎は、開口時に右側または左側に偏位した。閉口相では、左右の下顎頭が共に後方移動して、咬合相開始時までには両側とも最後方位に移動した。下顎頭運動に伴う咀嚼筋の活動に関して、作業側咬筋の活動は閉口相後半に始まり、平衡側咬筋は咬合相開始時から活動した。次に、咀嚼機能の発達について,固形飼料飼育群と液状飼料飼育群間の比較を行った。C3Hマウスを用い、固形飼料飼育群には、2週齢以降より固形飼料を与えた。液状飼料飼育群は、2週齢以降より固形飼料飼育群から分けて飼育し、液状飼料を与え、4、6、8、10週齢まで液状飼料で飼育する4群に分けた。咀嚼機能の発達の評価については、食物の噛み分けと咀嚼系路・リズムの安定性の2項目において検討した結果、液状飼料飼育群では,各相周期時間,全周期時間ともに,ペレットとパン咀嚼時で有意差が認められず,食品の性状により,咀嚼リズムの変化がみられず、食べ分け,噛み分けがなされていないことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウスの顎運動を視覚化するためには、モーションキャプチャーシステムと動物実験用3DマイクロX線CTを組み合わせ、顎運動データを頭蓋顔面形態データに関連付ける必要があるが、動物実験用3DマイクロX線CT装置に不具合が生じ、頭蓋顔面形態データを記録できないという事態が発生したため、研究の進行に遅延が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
今後、咀嚼・嚥下機能発達の評価と軟食化の影響の解明、臨界期(critical period)の有無、時期を解明するために、液状飼料飼育マウスを対象として、顎運動と同期した咀嚼筋筋活動のデータを取得し、固形飼料飼育マウスの結果との比較を行う。咀嚼機能の発達の評価については、食物の噛み分けと咀嚼系路・リズムの安定性の2項目に加えて、咀嚼効率についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の手法には、モーションキャプチャーシステムと動物実験用3DマイクロX線CT撮影を適用しているが、動物実験用3DマイクロX線CT装置に不具合が生じ、形態データを取得できない事態が発生した。このため、動物実験に必要な経費の執行が行えず、次年度使用額が生じた。また、光学的手法であるモーションキャプチャーシステムを用いて、顎運動を測定する際に、頭部変動による誤差を取り除くために、頭部を固定した状態で、顎運動を計測せざるを得ないため、餌を摂取したり、咀嚼開始するまでに時間がかかるなどの実験手技における問題が生じ、動物実験の遂行自体にも遅延が生じた。 今後の使用計画については、頭部固定状態での給餌法についてさらなる検討を加え、研究の遅れを挽回すべく、実験に必要な物品、その他を購入する予定である。
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