研究課題/領域番号 |
20K10214
|
研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
星野 倫範 明海大学, 歯学部, 教授 (00359960)
|
研究分担者 |
荻原 孝 明海大学, 歯学部, 講師 (10705247)
大岡 貴史 明海大学, 歯学部, 教授 (30453632)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 誤嚥性肺炎 / プレボテラ属 / フゾバクテリウム属 / 唾液 / LAMP法 |
研究実績の概要 |
本申請研究では、誤嚥性肺炎の起炎菌といわれるPrevotella melaninogenicaやFusobacterium nucleatumなどに注目し、①誤嚥性肺炎起炎菌に対する迅速で簡便な検出同定LAMP法の確立、②唾液を検体とした本手法の応用により、誤嚥性肺炎起炎菌の同定検出が可能であるかを検討、③起炎菌の増加を実際に把握した上でその棲息部位やバイオフィルムに対する直接的な口腔ケアの手法の確立を目的とすることとしている。 今年度はまず①に対するアプローチを行うこととし、誤嚥性肺炎の起炎菌であるPrevotella属、Fusobacterium属などの嫌気性菌を中心とした対象とし、とくに以前の研究で遺伝子解析を行い、これらの菌種に共通して存在するといわれているtype IX secretion systemに関わる遺伝子の一つであるporKを標的としてLAMP法のプライマーとして応用できないかを検討するために遺伝系統解析とアライメント分析を行い、保存性の高い領域と菌種特異的な領域を抽出し、菌種同定が可能なプライマーの設計ができる領域を検討することとした。その一方で、すでに16S rRNA遺伝子を標的としたリアルタイムPCRで同定、定量できることが報告されていることから、本遺伝子によるプライマーの設計を検討することとした。 また、②の目的を遂行するための準備として、唾液を検体とした同定検出法の開発のためには、唾液をサンプルとして収集する必要があるため、介入研究ではなく、また侵襲も伴わないが、本申請研究に関わる必要な倫理申請を行うための準備を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度は、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行があった一方で、研究代表者は教育部門においては学生部長および第6学年の学年担任、病院部門においては医療安全管理・感染対策執行部長の任に当たっていた。そのため、学生教育においては新型コロナウイルス感染症に対する学生の感染防止対策や学生への指導、新型コロナウイルス感染症に罹患あるいは濃厚接触者となった学生の登校基準の取り決めを社会情勢や地域の感染状況に応じて行う必要があった。また、病院業務においても病院職員から感染者が出ないようにするための防止対策や、新型コロナウイルスの感染者、あるいはその濃厚接触者となった場合の病院スタッフの職場復帰の目安の決定、診療における感染防止策の取り決めやその遂行などを新型コロナウイルス感染症の感染状況に応じて行う必要があった。また、地域における、新型コロナウイルスの感染者、あるいはその濃厚接触者となった患者の受入れに関する指針や実際に受け容れなければならない場合の方法を決める必要もあった。こうしたことから本申請研究の計画そのものというよりは当初予定していた業務のエフォートがこれらの業務によりくずれ、十分な研究を行うことができなかったため、進捗が遅れてしまった。 また、臨床サンプルの収集に関する倫理申請も倫理申請書類作成の遅れや回収するフィールドの協力状況の確認や新型コロナウイルス感染症に対するサンプルの収集の配慮、倫理委員会の開催状況も勘案する必要が生じていたため、これらも研究遂行を遅延する原因となっている。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は、研究計画そのものによる遅延というよりは、実験関連器材の納品の遅れなどを含む研究環境における機能不全や研究代表者が想定外に研究に対するエフォートの確保ができなかったことで遅延が生じている。研究開始当初は、実験に使用するPCRチューブ、試薬などの納品の遅れもあったが、現状その部分での遅延は解消されてきている。新型コロナウイルス感染症の感染拡大の状況は、第4派が到来したといわれ、終息はまだ見込めないところであるが、学事業務、病院業務に対する対応策もある程度は基本方針が決まってきており、業務的な部分でのエフォートの改善も見込めることから、①の部分の遂行に関しては、当初計画していた研究が通常通りに行うことが出来るようになれば、標的となる遺伝子の遺伝系統解析やアライメント分析、これに基づいたプライマーの設計などは特別な方策を講じなくても推進することが可能であると考える。その一方で、標的菌種のDNAなどは市販のものなどを利用をすれば、リアルタイムPCRやLAMP法自体が検出系として動くかどうかの検証は可能であると考える。②以降の部分に関しては、サンプルそのものが新型コロナウイルスを含む可能性もあるため、その扱いに対する配慮を倫理申請も含め、考慮する必要もあるかもしれないが、終息時に向けて準備をしておくとともに、新型コロナウイルスを含ないことが担保される研究組織のメンバーからのサンプルを利用することで実験系の確立をまず行うことを今年度は目標とする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、各種学会が中止、web開催となったりしたため、旅費等の支出がほとんどなかった。また所属部署における研究経費で消耗品等の支出がまかなえたため、物品費の支出のみにとどまった。
|