研究課題/領域番号 |
20K10224
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
大島 邦子 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (80213693)
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研究分担者 |
大島 勇人 新潟大学, 医歯学系, 教授 (70251824)
早崎 治明 新潟大学, 医歯学系, 教授 (60238095)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 歯髄幹細胞 / 歯髄再生 / GFP / 再植 / アドレナリン受容体作動薬 |
研究実績の概要 |
小児の歯の完全脱臼における第一選択は再植だが,歯根完成歯では再植後の歯髄再生は期待できず,長期保存の保証はない.我々はこれまで,マウスの歯を再植前に歯根短縮術を施すと,歯髄内に早期の血行回復がおこり,歯髄静的幹細胞の活性化を促すことを明らかにした.しかし,歯根短縮術は根尖部歯髄に存在する幹細胞群SCAPを失うこと,また歯根が短いことは歯の長期予後を悪化させることから,歯根短縮術を行わずに,早期の血行回復と歯髄幹細胞の賦活化を惹起する方法として以下の実験を考案し,実施した. ①再植時の髄床底部への意図的穿孔形成 深麻酔下で3週齢マウス上顎右側第一臼歯を抜去後,髄床底に直径0.5mmのカーバイドバーで穿孔形成し,抜歯窩に再植した.術後3日~8週まで継時的にマウスを麻酔下で灌流固定し,歯髄治癒過程を解析した.その結果,対照群に比較し,実験群では穿孔部から早期の血行回復が起こり,術後3~5日の歯髄内アポトーシスの減少と細胞増殖活性の増加を促進し,術後2週の実験群の再植歯遠心根でNestin陽性率が有意に増加し,歯冠部の第三象牙質形成が増加した.従って,髄床底部への意図的穿孔形成が髄床底部からの早期の血行回復を促し,歯髄静的幹細胞を賦活し,歯の再植後の歯髄治癒を促進することが示唆された.しかし,今回の実験では髄床底穿孔部での骨形成・アンキローキスが惹起され,7日後のマラッセの上皮遺残の有意な減少を伴った. ②再植歯のβ3アドレナリン受容体作動薬溶液への浸漬 Hanks液にイソプロテレノールを5~20%の濃度で添加した溶液に,抜去歯を5分間浸漬後に再植し,2週後の治癒過程を解析した.その結果,有意差はないものの,Hanks液のみの対照群に比較して,10%実験群でNestin陽性率が高い傾向がみられた.すなわち,歯髄治癒が促進する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
手技の確立にやや時間を要したが、おおむね順調である
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今後の研究の推進方策 |
(1)穿孔実験 これまでの実験結果をまとめ,論文投稿準備中である.また,上記の野生型マウスを用いた実験に加え,現在,歯髄静的幹細胞を可視化できるTetOP-H2B-GFPマウスでも同様の実験を実施しており,結果を解析中である.今後は,穿孔の大きさを調整し,マラッセの上皮遺残を含む歯周組織の損傷を最小限にすることで髄床底部での骨形成・アンキローシスを抑制し歯髄治癒を促進する方法論の確立が必要である. (2)浸漬実験 5分間浸漬実験で有意差が出なかった原因として,溶液の歯髄への浸透時間が不十分である可能性が考えられた.そこで,対照群と10%β3アドレナリン受容体作動薬溶液浸漬群で30分浸漬実験を実施・解析する予定である. 以上の実験により、人為的血流調節と神経伝達シグナル調節が歯髄静的幹細胞を活性化するという仮説を検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID19の影響で学会や打ち合わせ等の旅費を使用しなかったため。 次年度に旅費が使用できる状況であれば使用し、それが困難であれば試薬、実験動物等の物品費に回す予定である。
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