研究課題/領域番号 |
20K10225
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
仲 周平 岡山大学, 大学病院, 講師 (10589774)
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研究分担者 |
仲野 和彦 大阪大学, 歯学研究科, 教授 (00379083)
仲野 道代 (松本道代) 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (30359848)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | IgA腎症 / Streptococcus mutans / コラーゲン結合タンパク / ラット頸静脈モデル / ラット齲蝕モデル |
研究実績の概要 |
これまで、IgA腎症患者の唾液中にはコラーゲン結合能を有する Streptococcus mutans が高頻度で存在しており、これら菌株を保有する患者では、齲蝕経験歯数やタンパク尿の値が有意に高いことが報告されている。本研究の目的は、S. mutans の関連するIgA腎症発症のメカニズムを明らかにすることである。まず、IgA腎症患者より分離したコラーゲン結合能を有する S. mutans をラット頸静脈より投与し、15、30、45および60日後に尿を採取し、成分分析を行った。その結果、タンパク尿は菌投与後30日に非投与群と比較して有意に高い値を認めた。PAS染色像では、投与後30および45日の菌投与群では非投与群と比較してメサンギウム細胞および基質の増殖が認められた。一方で、投与後60日ではこれらの所見は認められなかった。さらに蛍光免疫染色像から、投与後30および45日の菌投与群のメサンギウム領域において、IgAおよびC3の有意な沈着が認められ、メサンギウム領域に高電子密度物質の沈着も確認された。ラット齲蝕モデルを用いた検討では、同 S. mutans 菌株をラット口腔内に定着させ齲蝕を誘発させた結果、菌投与群のプラークスコアと齲蝕スコアは非投与群と比較して有意に高い値を示した。菌投与群では、血尿陽性率は高く、PAS染色像では、メサンギウム細胞および基質の増殖が認められた。さらに蛍光免疫染色像では、メサンギウム領域において、IgAおよびC3の有意な沈着が確認された。 これらの結果から、ラットモデルにおいてIgA腎症患者より分離した S. mutans を頸静脈より投与した場合は、一過性に IgA腎症様腎炎の発症を認め、ラット口腔内に同菌株を定着させ重度齲蝕を誘発した場合には、長期間ラット体内に持続的に菌が侵入することでIgA腎症用様腎炎が発症することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究当初に予定していたラット頸静脈モデルおよびラット齲蝕モデルを用いた動物実験に関しては予定通りに進行している。今後は、IgA腎症患者の口腔から分離されたコラーゲン結合能を有する S. mutans 株の性状や機能に関して分子生物学的手法を用いて解析していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度得られた結果が概ね予定通りであったため、次年度も申請書に記載した当初からの計画を予定通りラット齲蝕モデルを用いた検討と IgA 腎症を有する小児・思春期患者口腔内の S. mutans の分布に関しての解析を推進したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
生体側病原メカニズムの解明として、ラット齲蝕モデルを用いた検討は予定通り遂行できたが、菌体側病原性の解明としての IgA腎症患者唾液中より分離したコラーゲン結合能を有する S. mutans の分子生物学的検討を予定通り進めることができなかったため、次年度に使用する予定とした。
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