研究課題/領域番号 |
20K10225
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
仲 周平 岡山大学, 大学病院, 講師 (10589774)
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研究分担者 |
仲野 和彦 大阪大学, 大学院歯学研究科, 教授 (00379083)
仲野 道代 (松本道代) 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (30359848)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | IgA腎症 / Streptococcus mutans / コラーゲン結合タンパク / ラット頸静脈モデル / ラット齲蝕モデル / RNAシーケシング |
研究実績の概要 |
これまで、IgA腎症患者の唾液中にはコラーゲン結合タンパク(Cnm)を有する Streptococcus mutans が高頻度に存在し、この菌株を保有する患者では、齲蝕経験歯数やタンパク尿の値が有意に高いことが報告されている。本研究の目的は、S. mutans の関連するIgA腎症発症のメカニズムを明らかにすることである。IgA腎症患者より分離したCnmを有する S. mutans をラット頸静脈より投与するモデルと、ラット口腔内に同菌株を定着させ齲蝕を誘発させた齲蝕モデルを用いて検討を行った。いずれのモデルにおいても、腎臓糸球体においてメサンギ ウム細胞および基質の明確な増殖とメサンギウム領域にIgAおよびC3の沈着が認められ、IgA腎症の臨床的な所見を生じることが明らかとなった。さらに、IgA 腎症患者唾液中より分離したCnmを有する S. mutans 株とCnmを有さない S. mutans 株より菌の RNA の抽出を行い、RNAシーケシングによる網羅的な遺伝子の発現の解析を行った。その結果、Cnm はグルカン合成酵素 (GTF) や グルカン結合タンパク (Gbp) などのバイオフィルム関連遺伝子の発現やABC トランスポーターの発現に影響を及ぼしていることが明らかとなった。これらのことから、Cnm は細菌やバイオフィルムの構造および抗生物質への耐性を変化させることによって、宿主に侵入した細菌の生存戦略に関わっている可能性があることが示唆された。これらの結果により、ラットモデルにおいてIgA腎症患者より分離した Cnm を有するS. mutans が血中に侵入した場合、生体内での菌の付着や侵入などによって、宿主に何らかの免疫反応が惹起されることによって、IgA腎症様腎炎を発症している可能性が示唆された。
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